いじけた意思表示として必ず私とは逆を向く。
ああ。変わっていないと感じてどこか嬉しく安堵して口の端を上げる。
思わずご機嫌取りのように何かしようと手を伸ばしかけ、でもすぐに叶わないと元に戻した。
何をしていいのか分からなかった。
髪を悪戯しようにもフードに覆われて、昔みたいな駆け引きで肩に寄りかかるにはその関係性が浅い。
期待を持たせるような言葉遊びも不可能で、そうして気がつけば過去の時間、自分たちがどれだけ相手に自由だったか理解して今の不自由に落胆する。
仕方ない。
だって夫婦じゃない。
恋人ですらない。
友達とも違う。
じゃあ・・・・・私たちは何?
もどかしくて切なくて・・・・あの時間が恋しい。
理由なく触れ合えた時間がどれだけ貴重だったか。
大切なことに気がつくときはいつだって失った後なんだ。
どうする事も出来ずにぼんやりと海に視線を移した。
相も変わらず綺麗に反射する海を見つめて不意に思い出した。
あの過去の時間に自分がこの海に思った未来の事を。
あの時思ったんだ。
いつかこの時間の先に、こんな風にこの海を見た時にこの時間は楽しい記憶になっているのか、悲しい記憶になっているのか。
前者がいいと願って賭けて・・・・・・。
こうして改めて海を見ながらの過去の時間は後者に近い。
じゃあ、今日この日の記憶はいつか・・・・どんなものに変化していくのだろう。
そんな考えに耽った瞬間にふわりと吹いた潮風に小さく鳥肌立って震えた。
でも、
ああ、理由があった。
そう思って膝の上で組んでいた腕を防波堤に降し、地面についていた彼の手を探すようにコンクリート這わせて不意にぶつかった。
同じように思考だったらしい彼の指先と。
トンと触れ合って、ほぼ同時に視線を絡めて不動になる。
あの時と類似。
だからこそ理由として先に口を開くと。
「・・・・・寒かったので、」
「・・・うん、俺も」
「・・・・でも・・・・この革の手袋は冷えてて逆に冷たい」
軽く嫌味っぽく、冗談でそう切り返すと彼も困ったようにクスリと笑って頷いていく。
それでも寒さを理由に指先を絡めお互いの存在を確立して、この記憶にも多少の甘さを混ぜることが出来たと些細な満足に口の端を上げる。
でも・・・・本当は、
「足りない・・・・」
響いた声に驚いて、自分の気持ちを代弁したような彼の声に視線をスッと移動させる。
だけどもその視線は絡んでいないとすぐに理解。
軽く伏せてある顔のその視線は今絡んでいる自分の手に注がれていると分かる。
言葉の続きがあるのかと見つめて待っていれば、ようやくスッと上がった視線が私を捉えて笑みを浮かべた。



