不思議だ。
あの日からもう一年が経ってしまっているんだ。
そう思いながら年月示すような自分の長い髪に指先で触れながら彼を振り返る。
私の髪が伸びたなら、彼もあの時とはまるで違う姿でそこにいる。
自分のすべてを否定して隠すような装い。
隠せる限りに肌は覆い、風に揺れる髪もフードから出た僅か。
彼の美点であるグリーンアイでさえも黒いガラスで覆われて。
全て全て私のせいか・・・・。
そう思うと同時に感じる痛みと切なさ。
あの時を真似てこうして並んでもあまりにも今は違いすぎて、過去にここで何の意識もせずに出来たことが今は簡単に出来ないのだという現実。
そりゃあそうだ。
もう根本から違う。
あの時はどんな事情を抱えていても絶対的な名称で私たちは繋がっていたんだ。
歪でも不完全でも・・・・確かに・・・。
夫婦だった。
ずっとそうであると。
そうでありたいとどこかで願って・・・。
ああ、それで・・・・あんな賭けをしてしまったんだっけ。
全ては小さく手にしていた物より高望みした欲によってこうなったのか。
何かの教訓の童話みたいだ。
「・・・・メロンパン」
「・・・はっ?」
「いや、ほら、ここで思ったじゃん。もうしばらくは食べたくないって」
「・・・・・ああ、・・・・ははっ・・確かに」
突如言い出した詳細は深く回想しなくてもすぐに思い出す。
思い出しても苦笑いしてしまう記憶に強い黄色いパンの山と甘い香り。
そう言えばメロンパンもしばらく口にしていないと、あの甘さに懐かしさを感じていれば不意に髪に触れてきた指先に驚いてビクリと反応した。
犯人は勿論隣の男。
驚いた私などお構いなしに手袋施した指に髪を巻きつけたり払ったり。
一体何をしているのかとじっと見つめて様子を伺って、次の瞬間には息が止まった。
止める必要もなかったのに。
指先で何度か巻きつけられたり揉まれたり、感触確かめるように弄られた直後にスッと寄った彼の顔。
驚く間もなく髪の束に触れた彼の唇。
一瞬息を止めて驚き、すぐにパッと彼の手から髪を引き抜くと動揺露わに声を響かせてしまう。
「な、何してんですか?」
「・・・・いや、ほら、手はこうして手袋してるから質感確かめられるの唇かなぁって・・・」
「気持ち悪っ・・・」
「いや・・・うん、本気で嫌悪の表情でそう言われると結構ショックなんだけど?」
「いきなり髪の毛の口づけられた私のショックより大きくないかと」
「千麻ちゃん・・・そんなに俺が嫌いですか・・・」
思いっきり不快感露にされた行為に拒絶を示すと、さすがに軽く傷ついたらしい彼の不貞腐れた態度。



