そして、まだ明かされていない内容もある。
彼が言った『触れ合わなくても生み出せるもの』の詳細。
それについてもまだ明かされず、具体的なリハビリ案も分からないままただ買い物のつき合わされた時間は意味あるものに思えない。
会話だってそう。
彼のいつものおふざけばかりで自ら過去に触れるでもない、未来の話を提案するでもない。
ただ今この瞬間を楽しんでいる様にしか感じないのだ
確かに流され、どこか楽しんでいた気持ちもあった。
でもそれを継続させるのは違う。
意味も理由もない危険孕む時間を継続させる気はさらさらない。
「返してください」
「ね、もう少し」
「そう言えば引き延ばせるとでも思ってるんですか?あなたのする事に私はどうしても重要な意味を感じられないんですよ」
「そう?・・・まぁ、そうかもね」
「ふざけてるんですか?」
「ううん、至って大真面目。今はきっと分からない。でも・・・後で理解するよ。俺がこうして振り回した理由」
「・・・・・そうやって・・・・また煙に巻くんですか?」
言葉巧みに甘い誘惑的な蜜を塗って、気になるなら・・・答えを知りたいなら騙されろと説得する。
拒みたいのに、誘惑に弱いのが人間だ。
そしてその力が強い【秘密】という誘惑。
謎解きに必要な工程だと教えられたら頷いて飲み込むしか答えは得られず、それでも迷って揺れている私に彼の後押し。
「じゃあ、・・・次で最後。・・・次に行く場所は・・・・千麻ちゃんにも分かりやすく重要だと思う」
「・・・・・どこに?」
「ついて来れば分かる」
何て狡い答え。
結局彼が満足いくまで答えは絶対に明かさずに私を繋ぎとめ翻弄するんだ。
期待を裏切ってここで帰ればいい。
きっと誰か一人はそう言いそうだ。
でも・・・、ついていってしまう私はやはり馬鹿なのだ。
「・・・・本当に次の場所に行ったら・・・返してくれますね?」
「うん。・・・・約束する」
サングラス越しだけれどまっすぐに視線交わして、おふざけなしの約束。
次こそ最後だと。
どんな流れで彼の満足いく答えを得られなくても・・・もう最後。
そう自分の心にも強く深く言い聞かせると息を吐いてから数回頷く。
『ありがと』と小さく口にした彼が口の端を上げるとバイクに跨り直した。



