すぐに追って降りようとすれば、振り返り切らない彼の先の牽制。
「ごめん、ちょっとそこで待ってて」
振り返らなかったのはサングラスも外していたから。
その理由は彼が向かう場所で明確だ。
さすがにあの装いでは入りにくいだろう。と苦笑い。
と、同時に何の用でここに来店したのか?と言う疑問も浮上する。
彼が足早にその身を投じたのは割と有名な宝石店で、今までの様な装いでは確かにしゃれにならない事になるだろうと思われる。
ただ言われるままバイクにちょこんと跨り景色や自分の毛先なんかを確認していれば、不意に遠巻きに聞こえる『ありがとうございました』の声。
それに反応して視線を向ければ、頭を下げている店員に愛想よく返した彼がフードを被りながらこちらに向かってくるところで。
行きには持っていなかったその店の名が入った袋を持っているという事は、何かお買い上げしたという事らしい。
「お待たせ~、」
「珍しいですね。あなたが宝石店で買い物なんて」
「ん~、千麻ちゃんではない可愛い子への貢物」
「・・・・」
「あっ、妬いた?妬いた?」
「いえ、物でつらないと口説けない程あなたは落ちぶれたのかと」
「・・・・別に本気になれば言葉一つで落とせますけど?」
「じゃあ、その相手とどうぞ末永くお幸せに」
すかさず手を差し出したのは言わずもがな。だ。
だって、何で私がどこぞの女への貢物を引き取りに行く彼につき合わされなければいけないのか。
内心苛立ち満載でにっこり微笑むと、何が可笑しいのかクスクスと笑った彼が差し出した手の上に自分の手をポンと乗せるとそのままキュッと握りしめてくる。
勿論手袋ありの接触。
それでも一瞬は緊張してすぐに落ち着いた。
「嘘・・・」
「・・・・」
「可愛い子ではあるけど、千麻ちゃんが思うような女の子へのプレゼントじゃないから」
「別に・・・・聞いてません。・・・・それより、もういいですか?これ以上一緒にいても何か得る物があるとは感じられないんですが?」
そう、別に私は彼の所用に付き合うために行動を共にしているわけではない。
この同行に意味があるというからついてきたのだ。
なのにカフェを出てから意図のわからない彼の買い物に付き合わされてばかりの時間。
確かにリハビリとして多少改善した部分もあった。
でもそれはこの2件の買い物には全く関わりの無い部分で。



