すぐに彼が私の前に跨って座るとその重さでバイクが沈んだ。
そして今度は意識して見つめてしまう。
彼のフードが取り払われる瞬間を。
ばさりと音を立てそうにフードが首元に落ちて、露になった髪が風に柔らかく遊ばれる。
その動きが自分を誘っている様にも見えて、疼く衝動を堪えて意識してこぶしを握った。
そしてメットが被せられた瞬間に安堵する。
諦め落ち着く衝動に。
望み果たせなかった自分の手を宥めるように彼の体に滑らせ巻きつける。
この行為に抵抗が無いのはバイクから落ちないためと言う理由があるから。
だから最低限の接触として心がそれを許してくれる。
厚手のパーカー越しに彼の体のラインを感じて少しだけドキリとしたのは内緒。
困るほどのリハビリ効果なの。
あなたが宣言したとおりに、リハビリがきいて触れ合い可能な範囲が広がる程馬鹿に貪欲な感情がもっともっとと騒ぎ始めるの。
触れたい。
もどかしいと思い始めてる。
恐怖心が薄れ始めれば欲が先走って前に出て、過去に得ていたぬくもりに触れたいと疼いて私を困らせる。
あなたの手に触れたい。
手袋越しじゃなく。
髪に触れたい。
躊躇うことなく。
頬に触れるサングラスも、唇に触れた包み紙も邪魔。
キスしたい。
・・・・・・・怯えることなく、あなたの目が見たい。
ねぇ、あなたが望むままについていけばそれも可能になるというの?
バイクの振動と流れる風を受けながらそんな疑問を馳せて彼の匂いに身を任す。
これを理由に彼に触れていてもいいというのなら、このまま走り続けてほしいと思うほどに。
馬鹿だ。
そんな風に染まるように想うほど、何かに落胆した時の失意はさっきの比ではないというのに。
絶対にまた後悔するのに。
どうして私は彼に惹かれて従ってしまうのだろう。
違う・・・・分かってる。
私が今も馬鹿だからだ。
馬鹿だから・・・・・・、
まだどこかで期待してる。
彼を許せる自分を・・・・。
そうやって自分でも模索して、悩んで、とにかく今だけでもこの存在に浸ろうと身を任せていれば。
永遠に走り続ける筈もないバイクがゆっくり歩道によると動きを止めた。
すぐにエンジンも切られ、目の前の彼がメットを外すとフードを被り直すことなくバイクを降りた。



