夫婦ですが何か?




あっ、邪魔。


でも、必要。


自分でも驚くような相反する意識をほぼ同時に感じ、直後絡んだグリーンアイに一気に意識を引き戻された。


本当にっ・・・、


訴えてやろうかこの男!!


勢いよく彼を突き飛ばした私の顔は鬼の形相だったんじゃないかと思われる。


近くに子供が歩いていなくてよかったと思うほど。


なのに突き飛ばされ地べたに座り込んでいる男ときたら、心底可笑しそうにケラケラと笑って私を見上げるものだから殺意まで芽生えそうになってくる。



「間違えました。誘拐犯じゃなく痴漢でしたね」


「いやぁ、なんかアメの包み開けて俯いてる姿が愛らしくてムラッと・・・」


「強姦もプラスですか?」


「だってこれでも純愛貫いて禁欲してきたんだよ?千麻ちゃんの為に」


「それはそれは、名目ともかくあなたに泣かされる被害者が出なくてなによりでした。そして、あなたにも朗報です。その通り一本裏路地入ればあなたの欲求埋めてくれるような店が立ち並んでますから、どうぞ思う存分解禁してきてください」


「おお、長々と嫌味な言葉綴ったね。でも残念。俺もう千麻ちゃんの控えめな胸にしか反応しない」


「・・・・・本当に・・・・・いい加減にーー」


「あと少しでいいから」



呆れて疲れて断ち切ろうとした瞬間に、今までと違ってどこか真剣な響きに思わず言葉を止められた。


そうして捉えた姿ももうふざけたようには笑っていない。


懇願するように、そうするのが最適であるかのような強めの笑み。


その含みは探る由もないのだけれど、まだ彼が望む何かをこの時間に得ていないのだと感じ取って理解する。


まだ、足りない。


まだ、私との時間に何かを得ようとしている。


さぁ、どうするの?千麻。


彼のこの無言の選択肢に乗るべきなのか、気がつかないふりをして拒んで彼との時間を絶つのか。



「・・・・千麻ちゃん、」



『お願い』


そう続きそうな響きに敗戦。


ふぅっと脱力したように息を吐いて片手で頭を抱えると、数回頷いて見せ声でも反応。



「あと・・・・少しだけ」


「フフッ、大好き千麻ちゃん」


「また、変なことしたら今度は去勢しますよ。私自らの手で」


「・・・っ・・・こわっ、リアルに怖い」



多分苦笑いを浮かべている彼にフンと鼻を鳴らすとバイクの後ろに跨ってメットを被った。