冷たい。
そう感じて追った感情は物悲しさ。
でも、まだ必要な防御だとも感じる。
それでも・・・、
「ほら・・・、触れた」
ゆっくり伸ばした指先を差し伸ばされていた彼の掌に置くと、ニッと満足げに微笑んだ彼が私の手をギュッと握ってそれを示す。
瞬間逃げ場のない自分の立場に気がつき動揺する。
いや、もちろん体の拘束とかそう言う意味合いでなく、感情面で悔しい。
まんまと彼が望むまま彼の理想通り動き、こうして自ら彼に触れることが可能になるほど【リハビリ効果】を示してしまったのだ。
くっそ・・・、本気で悔しい。
この勝ち誇ったような笑みが本気で憎い。
「あれ~?顔赤いよ千麻ちゃん。まさか俺に照れちゃったりしてる~?」
「・・・・・・運転・・・・私がしましょうか?」
「・・・・・・・とっても怖い予想としてさ、まさか振り落とそうとか、自分込みで車に突っ込むとか考えてないよね?」
「大丈夫です」
「違うならいいけーー」
「怖いのも痛いのも一瞬ですから」
「そっち!?怖いのも痛いのもいらないから!!ってか、俺運転するし!!」
真剣に身の危険を感じたのかしっかりグリップを握る彼に僅かに悔しさの解消。
そして息をゆっくり吐くと空いている彼の後ろを見つめる。
その視線を更に動かして空を見上げて、
高い。
そう感じた。
デジャブ・・・・・・。
ああ、心が・・・・・騒がない。
今この段階ではリハビリ効果の継続。
なら・・・。
再度深く息を吐いた。
そして持っていた鞄を先に彼の背中の前にドンと置いて、すぐにひらりと自分も跨るとバイクが重みで静かに沈む。
そのタイミングで彼からメットを渡され受け取って装着し、特に意味なく走らせた視線が不意に止まった。
ああ、なんか・・・・久しぶり。
そう感じたのはフードが外され風にふわりと揺れたダークブラウンの髪の後ろ姿。
再会してからはずっとまともに確認していなかった彼の要素にうっかり見惚れ、そして無意識。
気がつけばその髪に伸びかけていた指先が、彼がヘルメットを装着したと同時に行先を失い、無意識の行動に気がつきわずかな羞恥。
動揺露わにその手を空に泳がせていれば、軽く振り返った彼が無言で出発を促してくる。
それを理解して不動。
の、後、たいした間もなく自分の腕をそろそろと彼の体に巻き付けていく。
そうすれば必然的に密度の増す体。
同時に香る。
ああ、彼の匂いだ・・・・・。



