「・・・・・何で・・・」
「ん?『何で』笑ってるのか分からない。・・・そんな疑問?」
困惑したまま弾いた一言の続きを見事代弁して逆に問いかけてきた彼に小さく頷く。
だって、私は今確証もない責任を彼に押し付けて非難したんだ。
その事に怒るか悲しむかの反応が正解だと思っていたし、その反応に身構え怯んでもいた。
だからこそ予定外の反応に見事止まる。
どういう意味なのか、どういう心情なのか。
「嬉しいでしょう?だって・・・・それだけ強く、千麻ちゃんが俺との子供に愛情注いでくれてたって事だもん。
イコール・・・・俺の事大好きだったって事でしょ?
最高の・・・・・愛の告白じゃん。
必死になって千麻ちゃんの気持ち模索してた俺には最高の本心だよ」
心底嬉しそうに、満足そうに、まるで綺麗な言葉の羅列ばかりで愛を告白されたみたいに笑う彼に唖然とする。
ねぇ、ちゃんと聞いてたの?
あなたがそんな風に満面の笑みを浮かべるような愛情示す言葉なんて一言も言っていない。
むしろ棘ばかりの言葉で最悪の毒を吐き出したつもりだったのに。
なのに・・・・。
あなたの・・・独善的解釈には本当・・・・・・・呆れを通り越して感謝すらする。
呆然としてただ涙を流して、一人満面の笑みで私を見つめる彼を捉えて。
思わず口の端が上がった。
それを咄嗟に隠すように下を向くと言葉ばかりは楽天的な彼を非難してみせる。
「本当・・・・あなたって・・・あなたという人は・・・・・・、どこまで幸せな頭の人なんですか?」
「うん、俺めちゃくちゃ幸せ」
「別に・・・褒めたわけじゃありません」
「でも・・・・幸せなんですよ?
何を言われても、千麻ちゃんが傍にいなかった日々を考えれば今こうしてる俺は最高に幸せ」
「・・・・・・・手軽な・・・幸せですね」
「そう?まだこの手に無い分手軽とも言えない。サングラスも手袋も鬱陶しいし?」
そう言って自分の手袋に覆われた手をかざし、至る角度から確認した後にスッと私に向けて伸ばされた手。
一瞬ドキリとして、でも本当にその一瞬だけ。
不思議と継続しなかった不安に困惑し、まだ迂闊にその手に歩み寄る勇気は湧かない。



