ーーーーNEXT MORNINGーーーー
パソコンの入ったカバンを手にもう数分玄関の姿見の前で不動になっている。
しかも特別向きを変えて姿の確認ではなく、通り過ぎ様にうっかり目が止まって横姿の首だけ捻って鏡を向いている状態。
映るのは決して手抜きしたでも気合入れたでもないいつもの自分。
デニムのパンツにネイビーのニットソー、その上にジャケット。
髪の毛は今日は後ろで一つに結んでいる。
うん・・・いつも通り。
化粧だっていつも通りでケバイでもないしかといって手抜きでもない。
そんな事を真剣にチェックしてようやく我に返ると馬鹿らしいと自分を詰った。
何真剣に鏡の前で悩んでるんだ私。
デートに行くでもあるまいし、そしてもっと言えばこっちが気を使った格好で行こうがあっちは昨日とほとんど変わらない犯罪者スタイルであろうという現実。
「今更意識してどうする・・・」
そうポツリと決断を下すと自分の呆れるべき秘めた乙女心に溜め息をついて家を後にした。
そもそも浮れるような逢瀬ではないのだ。
会えば精神的に疲れる相手で、いつ自分の感情が壊れるか分からない危険人物ともいえる。
そうだ。
そんな相手に今日会いに行く理由はそんな甘ったるい事じゃない。
全てはUSBメモリ・・・・私の今後の生活の為。
どこか目的が曖昧になっていた自分を叱咤しながら今日も渋滞の道路を横目にいつもの店へと歩いていく。
そしてぼんやりと思い出す疑問の浮上。
考えてみれば昨日も一昨日も・・・彼は仕事に遅れて行ったという事なんだろうか?
だとしたらはた迷惑な。
そんな勤務状態の彼の現役秘書でなくてよかったと心底安堵して半分嫉妬。
そんな彼の抜け穴を埋められる秘書という事だろうか?
「・・・・・・馬鹿なのは私も・・か」
もしそうであるなら・・・・。
やはり・・・悔しくて、・・・もどかしくて・・・落ち着かない。
どこかで闘争心働いて、不意に競ってその位置を奪い取りたくなるなんて。
今もまだ・・・彼に特別なパートナーだと思ってほしいのか・・・私
やっぱり、私も大概ドリーマーなのだと困ったように小さく口の端を上げると通いなれた店先にその足が止まった。



