「ん?嘘?俺が?」
「・・・・昨日言ったじゃない。大道寺で打ち合わせだったって。彼に会ったんでしょう?」
「ああ、打ち合わせはあったよ。でも、俺は一言も君の元旦那様に会ったとは口にしてないけど?」
「・・・・」
「だから、嘘は心外だなぁ」
「あなたの言葉遊びは本当に時々殺意が芽生えるわ」
「お世辞としてもらっておくよ」
にっこりと悪びれもせずに微笑んでくる男に本気で苛立ち腕を組んで睨み上げる。
そんな事をしたところでこの男は喜ぶだけなのだけど。
自分でそう言い聞かせ納得するとわずかばかりの憤りを指先に移して髪をくしゃくしゃと掻き乱し荒く息を吐いて近くの壁にその身を預けた。
そんな私が可笑しいらしい恭司が着替えを終えてラフな部屋着でその身を近づける。
そのまま私の前を通過するのかと思ったのに、不意に薄暗く陰った自分の視界。
反応して顔を上げれば瞬時に自分の呼吸を奪われ代わりに彼の呼吸を流し込まれる。
抵抗もせず受け入れて自らも応えるように啄んで返すと、背中を這いあがった指先の感触に耐え切れずに熱っぽい声が漏れた。
だけどもそれすらも飲み込むように深まるキスと、背中を這いあがった手が髪を逆立てるように頭を支える。
ムカつくといくら思ってもこのキスだけは嫌いになれない。
むしろ私の性欲を構築したのはこの男だと言っても過言じゃない気がする。
困るほど的確に私の弱いところを攻めて来て、恭司程私の欲を満たす男はいないと思ってた。
思ってた・・・・のよね。
一瞬浮上しかけた別の存在を慌てて掻き消すように、しているキスに熱を入れる。
自らも貪欲に重ねて密度を増すと舌を絡めて、自分の腕を恭司の腰に回すと服の隙間から肌を探して着ている服をゆっくりめくるように指先を背中に這わせた。
「んっ・・・千麻、発情してる?」
「・・・・・こんなキス始めたのはそっちでしょ?」
「濃密にしたのは千麻だ」
「・・・・・じゃあ、それでいい」
そう告げて、面倒だと自分の着ていた服をばさりと脱いで床に放った。
晒された肌に今更羞恥する相手でもない。
それでもやはり久しぶりに裸を晒すというのはどこか緊張する物だと感じる。
「・・・・困った」
「何が?・・・・久々に改めて確認したら女としての魅力皆無だった?」
「いや、むしろ・・・・さっきの悶えて零した声聞いた時から俺も半分スイッチ入ってたんだよね」
ニッと意地悪に上がった口の端を確認し、直後に嫌味な微笑みなんて捉えられない程近くに顔を寄せられた。



