この沈黙の笑みがもの凄く痛い。
家に帰って来たというのに未だシャツにネクタイ姿。
テーブル挟んで向かい合った座った姿はさっきから笑顔の非難を続ける。
そしてその姿に不満なんて絶対に言えない。
言える立場じゃない。
私が言えるのは・・・・、
「・・・・・重要書類のデーター・・・盗られてすみませんでした」
「いやぁ、ビックリするぐらいの失態で思わず笑っちゃうよね」
「・・・・・・完全に私のミスよ。ごめんなさい」
「いや、たいした事じゃないよ。なに・・・・もし、何かあったら俺たち2人が路頭に迷うだけの」
「っ・・・・・・・本当にすみませんでした・・・」
もうその言葉しか出てこない。
笑顔の嫌味な言葉が的確に自分の痛い部分に突き刺さって、どんどん罪悪感に満ちる自分の視線はすでに目の前のテーブルにしっかりと落ちている。
もうすでに十分に責められ重圧感じたこの数分。
どうしたらこの耐え切れない重圧から解放されるんだろう?と真剣に考えていれば、追い打ちをかけるような深い深い溜め息のトドメ。
「まぁ、盗んだ犯人の目的がそのデーターでない事が何よりの救いじゃない?」
「今までで一番その言葉が堪えるわ」
「しかも交渉を望んでわざわざ明日にも機会を与えてくれてるわけだ?」
「・・・・・やっぱり、行かなきゃいけないわよね?」
「俺の今後の人生を養ってくれるって言うのなら特別何も言わないけど?」
「・・・・・・何とかする」
「正しい決断だね」
私の苦渋の決断にニッと満足気に微笑んだ恭司がやっとその体を動かして、着替えの為なのかリビングを抜け寝室に向かう。
何の気なしにその姿を追って寝室の奥のクローゼットを覗き込んだ。
予想しなくてもその姿はクローゼットにあって、覗き込んだ私に気がつくと意味なくクスリと笑って見せる。
「どうしたの?覗き趣味」
「・・・・ねぇ、一つ聞いていい?」
「ん~?」
「昨日は・・・何で私に嘘ついたの?」
そう、疑問だった。
その言葉を信じて今日もあの店に行ったのだ。
だからこそ噛み合わないそれに疑問を抱いて、データーの事を報告した後に確認しようと思っていた。



