「さすがどSなハニー・・・、でもさすがにちょっと傷ついたハートが粉々になる寸前なんだけど?」
「・・・馴れ馴れしく『ハニー』とか呼ばないでもらえませんか?本来同意なく猥褻な行為、言動で迫って来ているあなたを警察に突き出すなんて簡単な事なんですが?」
「本当は嬉しいくせに」
「・・・・確か鞄にペーパーナイフが・・・」
暗に、刺し殺すぞ。と意思表示して鞄に手を突っ込めば、それを食い止めようと私の手に伸ばした手を寸ででピタリと止めた彼。
それを確認し、ゆっくり視線を上げるとグリーンアイを見つめる。
また・・・もどかしく戸惑うような姿。
サングラスが無い分感情が分かりやすい。
そして彼なりに自分に牽制して私に接している。
でも・・・、
「・・・・・・今更ですよ、」
「えっ?」
「今更・・・あなたに期待することもない。努力して触りたいとも思わない。まず・・・・心穏やかに触れ合う事なんてもうできない」
「・・・・・」
「そんな2人が一緒にいて・・・、一線引いて、お互いに何を期待して何を生み出せるって言うんですか?」
「・・・・」
「肌を合わせたところで埋まるのは欲求だけ。一生消えない不発弾の様なものを抱えたまま次の希望を見いだせない。出来ても・・・・愛せない。・・・・そんな気がする」
「・・・・・・・・つまり・・・、千麻ちゃんの愛情はあの瞬間にあの子に捧げて消えてしまった?」
「・・・・・今も・・・・愛してる。・・・わずかな時間でも・・・私は確かに・・・母親で・・・まだ形にもなっていないような存在だったけど・・・・・愛おしかった」
ああ、また泣いてしまいそうだと気がついた。
目頭が熱くて鼻をすすって、それに気がついて気丈を作り直すと何とか口の端を上げて強気に微笑む。
そして決定打。
「私達はもう・・・純粋な何かを生み出せない。どうしても・・・あの子と比べてしまうし・・・・、あなたに期待をかけそれを負担にさせるのも・・・・・嫌、」
はっきりと、
もうこれ以上の関係修復は無理だと告げる。
好きだという感情だけですべてが解決するなんて綺麗事だ。
そんなにあっさり清算出来る感情なら・・・・あの時離れることもなかった筈。
シンッと静まった。
そうして意識してみれば店内のBGMが柔らかく耳に入り込む。



