Side 茜
畳の上にうつぶせに横たわって、目の前で小さくウゴウゴとしている小さな生き物に手を伸ばす。
指先でギュッと握られている手を軽くついてみれば、すぐに指先に絡んできた小さな指先。
ぬくもりと拙い力。
あどけない眼差しに思わず微笑み体を起こすと壊れてしまいそうな赤ん坊を抱き上げて覗き込む。
そんなタイミングに食事の乗ったおぼんを手に部屋に入り込んできた芹ちゃんがクスリと笑ってテーブルの前に膝をつく。
「また日華を抱っこしてたんですか?」
「だって可愛いんだもん」
「一日に1回はそう言ってますよね」
「もうさぁ、いっそ俺に養子としてくれない?俺おむつ替えとか完璧よ!?」
「さすがにおっぱいは出ないでしょう?」
「じゃあ、芹ちゃんが俺の嫁に来る?」
そんな事を言いながら口説くような表情で芹ちゃんの頬に手を伸ばせば、瞬時に頭に何か重くて硬い物が激突。
そして不機嫌で低い声の威嚇。
「黙れバツイチ。俺の芹ちゃんと日華に触んじゃねぇよ」
そう言って俺の背後に不機嫌全開で立つスーツ姿の雛華を見上げる。
その手にパソコン用の鞄があるところを見ると、俺はあれで殴られたんだろうと理解して痛む頭を労わるように摩った。
「ひーたん酷い。バツイチって・・・もっとオブラードに包んでくれたって・・・」
「・・・・・・最低発言して捨てられた惨めな男」
「ごめん・・・バツイチでいい」
「で?・・・・・そのバツイチな茜ちゃんの守備はどう?」
言い方は不機嫌の継続。
それでも問われた内容に再度雛華の顔を確認すれば、どこか落ち着かない様子でチラチラと俺の様子を伺ってくる。
何なんだか・・・。
心配してくれてるって事か。
考えなくても分かる雛華の気遣いに、ニッと口の端を上げて心配への返答。
そう、今のところは問題はない。
「問題ないよ」
「・・・本当?無事・・・・確認した?」
「うん、相変わらずだった。仕事に夢中で、時間も周りも忘れて・・・・、」
相変わらず・・・・あのフレーバーコーヒーが好きなんだね。
彼女の注文を聞いて小さく笑った。
本質的には変わらない彼女に安心して恋しくて。
バレる危険を冒しても頻繁に振り返ってその姿を確認した。
見た瞬間、
切なくて・・・・・・恋しかった。
あまりに変わらなくて・・・・何事もなく話しかければ、いつもの様な反応で返してくれるんじゃないかと言うほど。



