夫婦ですが何か?




そんな瞬間。


後ろで一つに結わえていた髪が不自然に揺れる。


そして同時に小さく巻き起こった風と・・・・・かすかな香り。


咄嗟に揺れた髪を押さえて振り返ってみると、さっきのフードの姿が店の入り口に歩いていくところで。


どうやら背後を通ったすれ違いによって巻き上がった風。


でも疑問残る髪の揺れとかすかに感じたどこか馴染みある匂い。


すれ違っただけにしてははっきり揺れた髪は不自然だ。


何かがぶつかった?


そんな疑問を抱いていれば店員の女の子の確認の声で視線を戻し、でもすぐに入口にその視線を向けた。







驚いた瞬間は・・・・スローモーションに感じる。






息が止まりそうで。


その逆に心臓は激しく跳ねだして。


目は瞬きをするのを忘れる。




一瞬、


一瞬だ。


そして本当に定かでない。


入口に視線を向けた瞬間店を出かけていたフードの人が首だけ捻ってこちらを見ていて。


フードを被っていて顔も判断しにくい、それなのに更にサングラスをつけて。


なのに一瞬、時期的には早いのに黒い手袋をつけた手が軽くそのサングラスを下げたんだ。


そして捉えたのは・・・・・・、


一瞬だったから見間違いだったかもしれない。


すぐに背中を向けたから違うかもしれない。


とにかく、『そうだ』と決定づけるには確証がなさすぎる。


それでも・・・・。


あのサングラスの下はグリーンアイだった気がする。


捉えた一瞬の顔は・・・・・・・・




彼だった気がする。






ダーリン?






馬鹿みたいにもう誰もいない入口を見つめる。


今見た姿は夢や幻だったんじゃないかと。


それでもまだ髪に残る揺れた感覚の記憶と匂い。


これは・・・・白昼夢?


他人のそら似?


あんな夢を見たから・・・・たまたま彼だと思ってしまったのか。


そうよ・・・だって。


思わず時計に視線を走らせた。


時間的には勤務真っ最中の時だ。


こんな時間に彼がこんなところにいる筈もない。


やっぱり・・・・見間違い?


それでも暴れる心臓を抑えて、震える手でコーヒーを受け取るとPCのあるカウンターに戻って座った。


そして確かめるようにフードの人がいたソファー席を見つめ、あり得ないと、きつく目蓋を閉じてそれ以上の予想に歯止めをかけた。