Side 千麻
ノートパソコンの入ったカバンを手にまだ出勤ラッシュの時間帯抜けきらぬ道路を横目に歩道を歩く。
これを避けて早めに出かける恭司を見送れば、私も程なくしてコーヒーショップに向かうのが日課だ。
店も決まっていてすでに通いなれたその店の入り口を越えれば出勤途中の人たちがレジに並んでコーヒーと朝食のテイクアウト。
もうすでに見慣れた光景だとレジの込み方に反してこの時間はほとんどが空席の店内の奥に進む。
今日もポツリポツリと座っている人はいるけれど、だいたいが選び放題だと迷わず窓際のカウンター席に向かった。
ソファー席にも座っている人たちが場所を離して2人程。
2人共その後ろ姿しか捉えられず、一人は大学生くらいの男だろうか?短髪の黒髪の後ろ頭が印象的で、もう一人はパーカーのフードをかぶって何やら携帯を眺めている。
どちらも若くて今時の子なんだなぁ。と視線を走らせ、すぐに鞄からノートPCを取り出して起動させる。
立ち上げている間鞄からUSBメモリを取り出しそれを差し込んでいく。
あとは飲み物を用意するだけだ。と席を立ち、ようやく空いてきたレジに注文しに向かう。
頼む物もいつも一緒。
ヘーゼルナッツのフレーバーコーヒー。
それを注文し席に戻れば完全に起動しているPCに口の端を上げる。
そこからは集中。
ひたすらキーボードと時々コーヒーで数時間。
長いときは昼までそうやって過ごすのだ。
今日は昼より早くキリがいいといい。
そんな事を思いながら文章のキリがいいところで手を止めた。
だけどやめたわけでなく小休憩だとコーヒーを口に運ぶ。
酷使した目を癒すように周りに向けて視線を一周させた時に捉えた姿に時計を確認した。
あれから1時間半。
私も人の事を言えないけれどあの人もよく1人で残っているものだと感じた。
ソファー席のフードをかぶった姿。
そして今もその姿は携帯を眺めているだけなんだ。
何を見ているんだろう?と好奇心はあっても他人に執着する私でもない。
すぐに興味は逸れて仕事を再開する前にもう一口。とカップを口に運んですぐに溜め息。
見事に空になったカップに息を吐くとゆっくり立ち上がってレジに行く。
今度は違うフレーバーにしようかと迷いながらレジに立ち、愛想のいい店員の女の子に商品とサイズを告げた。



