Side 茜
オフィスのソファーでやる気もなく横たわる。
どうせ不満を言う相手は誰もいない。と、そのまま目を閉じて眠ってしまおうかと思ったタイミング。
「何サボってるのさ?茜ちゃん」
そう言って覗き込んできた姿のグリーンアイを寝たまま見上げてにっこりと微笑む。
「おはよう、ひーたん」
「こっちも眠い中渋々出社したっていうのに・・・」
「眠い中と言うより・・・・・、日華(にちか)と離れたくなかっただけだろ?」
そう4か月ほどになる雛華の子供の名前を口にすれば見事締まりのない笑みで表情を覆う。
元は我が愛しき婚約者だった芹ちゃんと雛華の間に生まれたのはどちらかと言えば雛華に似た男の子。
そしてその我が子に今は全力の愛情示す、子供と大差ない中身の雛華。
こいつが子供育てるとかめっちゃ不安なんだけど。
まぁ、芹ちゃんがいるから大丈夫か。と廻った不安をそれで納得させその身を起こした。
ゆっくりだらけた体を伸ばしていき、ふぅっと息を吐くと目を擦る。
そんな俺に溜め息をついた雛華が思い出したように・・・、いや、多分忘れてなかったそれを確認してきた。
「・・・・・本当に・・・行くの?」
「・・・行くよ」
「不安は?」
「ないって言ったら・・・・嘘になる」
でも・・・・ずっと、我慢してたそれに行動できる興奮の方が勝る。
そして・・・・今日から始めるそれは本当に迎えたい瞬間の為のリハビリに過ぎないんだ。
「俺も・・・・・可愛い【我が子】の為に頑張らないとなんですよ」
そう言って微笑んでみせると雛華がどこか複雑に微笑み返して、滅多に見れないスーツ姿のポケットから愛用していたサングラスを取り出すと俺の顔にかけた。
「・・・・・すぐに必要なくなることを願ってるよ」
「サンキュ」
向けられた言葉と願掛けの様なサングラスに礼を響かせ見飽きているオフィスを横切っていく。
途中でもう一つ存在するデスクをチラリと確認し、フッと口の端を上げるとその姿を想像した。
そのままどこか浮き足立って扉に向かい迷うことなく外に出かけたタイミングに思い出したように振り返って補足した。
「すぐに秘書が来ると思うから、分からないことは聞いておいて~」
響かせた声に雛華が『了解』とばかりに手を上げるのを捉えて、今度こそ。と心置きなく歩きなれたローカを進んだ。
さぁ、
リハビリといこうか?



