恭司が指摘したように多少感情が乱れている今朝。
きっとあの夢のせいだ。
そう思って解放された口にコーヒーを流し込んだ瞬間。
「千麻のイライラの原因を探ってみようかと思っただけだよ」
その言葉にゆっくりと振り返って微笑み見つめる姿をまっすぐに見つめ返した。
ああ、このアングル・・・、コーヒーの匂い。
あの夢に似ている。
夢と言うよりは・・・・。
「・・・・ねぇ、」
「ん?」
「・・・・・・・愛してる。って・・・・言ってみて」
何て馬鹿な要求だろうとぼんやり思った。
でも、
この雰囲気で・・・・この状況で不意に言われたくなった。
それが懐かしくも恋しくもあって。
ぼんやりとそこに立つ姿を見つめて返される言葉にどこか期待して。
結果。
「・・・・そんな、・・・どこかの副社長を彷彿をさせる甘ったるいクサイセリフ言わないよ」
クスリと笑い嫌味を言ってのけると姿を消した。
そりゃあそうだと恭司の言葉に賛同して皮肉に笑う。
そうよね。
どうかしてる。
あの夢のせいだ。
酷く甘いのに起きてしまえば苦さばかりの。
丁度・・・・こんなアングルだ。
キッチンに立って朝食を作る私。
コーヒーが入る音と匂い。
そしてそのタイミングを計ったように姿を現す。
『おはよう・・・千麻ちゃん』
そう言って背後から抱き付いて・・・。
『愛してる・・・・』
耳元に吹き込まれた。
今もリアルに残る響き。
馬鹿な私。
ただの夢。
そして相手は恭司でないと明確に分かっているのにそれを実現させようとして。
「・・・・・欲求不満なのかな・・・私」
自分の不安定な心情に嘲笑を漏らし、コーヒーをもう一口飲み込んでからPCの前に戻っていった。
『愛してる』なんて言葉、
確かに、リアルに言うのはあなたくらいだわ。
でも、時々言われたくなるのよ。
どうしてくれるのよ?



