「コーヒーならキッチンに温かいのがあるわよ」
「でも、すでにカップに入って飲むだけのものが目の前にあった」
「勝手に飲まないで。カップに注ぎ直しに行くのも惜しいくらいの仕事の量ですから」
「コーヒーを注ぎ直す時間もないくらい余裕がないの?千麻ともあろう人が」
揚げ足取り。
そんな言葉にムッとしながら軽く睨み上げると立ち上がり、恭司の手からカップを取り返すとキッチンに向かった。
そんな私にクスクスと笑った彼が後を追う様にキッチンを覗き込んで壁に寄りかかる。
「・・・・なんか、少しご機嫌ななめ?千麻」
「別に・・・」
「千麻が機嫌悪いときは『別に』って流す癖があるよね」
「・・・・・」
その事実に反論したくとも言葉が出ず。
仕方なしに、面白くない。と視線で返せば、クスリと笑った彼がその身を起こして私に近づく。
その気配に気づきつつも注ぎ直したコーヒーを口にして無視していれば再び奪われたカップ。
非難するように睨み上げてすぐに接触。
と、ほぼ同時にカップが近くに置かれたコンっという響き。
触れて啄んで、ここまではさっきと同じ。
だけどもさっきより濃密さを感じさせる重なりが深まっていって、呼吸をするほんの一瞬に入り込んできた舌の感触。
さすがに少し驚いて目蓋をうっすら開けたけれど、すぐに濃密なキスに反応して応えてみる。
絡んできた舌に絡み返して、舐めて吸って扇情的なリップノイズを広げる。
ああ、なんか・・・・久しぶりだ。
そして珍しい・・・こんな風に恭司がキスしてくるなんて。
キスだけじゃなくゆっくりと胸に伸びた手と、感触確かめるように這う指先。
するのだろうか?
これから仕事なのに?
そんな事を思いつつも与えられるキスにようやく浸り始め目蓋を再度下ろした。
直後、何の名残惜しさもなくスッと離れた唇。
それに反応して目蓋を開くと胸に触れていた手も静かに退いた。
「・・・・・しないの?」
「・・・したいの?俺仕事なんだけど」
「・・・・・じゃあ、早く支度すれば?」
「そう思ってキスを切り上げた」
にっこりと微笑んで何事もなかったかのように切り返す彼に目を細めた。
まぁ、別に・・・したかったわけじゃない。
むしろ・・・少し・・・・。



