「勿体ない・・・賞賛・・・・ありがとうございます。・・社長・・・」
「まだ・・・義父(ちち)だけどね」
「・・・・・・ごめんなさい」
「・・・・・・謝るのは・・・こっちの方だよ千麻ちゃん。
茜の我儘に5年も付き合わせて・・・人生まで巻き込んでごめん・・・」
そう言って、デスクの上に静かに封筒が置かれた。
自分が差し出した物ではなく、表書きも何もない封筒。
でも・・・・中身は凡そ想像はつく。
「・・・・・茜から預かった。・・・・【契約】解除の為の書類。・・・・・・・サインと判は記入済みだって」
遠回しな詳細。
でも充分に・・・・痛い程中身を理解して。
涙が頬を伝う。
しばらく白い封筒を見つめ、それでも意を決して一歩前に踏み出すと手を伸ばしそれを持ち上げた。
軽いのに・・・重い中身。
ギリギリ・・・形ばかりまだ継続している彼と私の繋がり。
そう意識してまだ手しているこの瞬間だけは大切にしっかりと握って自分に寄せた。
「・・・・・・・千麻ちゃん、・・・数字にしてみれば限りなく少ない期間だったけれど・・・・・家族になってくれてありがとう」
「・・っ・・・」
「でも・・・・そんな法律上の繋がり無くても・・・・もうずっと、家族みたいに感じてた」
「・・・・だから・・・・勿体ないし・・・セクハラです・・・」
「その言葉も・・・・もう聞けないと思うと寂しい」
ああ、決壊だ・・・。
失態・・・。
情けない。
こんな風に泣くなんて子供みたいだ・・・・。
「・・・っ・・・ふぅっ・・・社・・ちょ・・・・、
社長・・・・お世話に・・・お世話になり・・まし・・た・ぁ・・」
あっ、この人も・・・・こんな顔をするんだ。
そう思った。
気がつけば・・・無意識に上げた視線にその姿を捉えて。
鋭さ皆無の、
優しくも・・・・寂しく悲しげな微笑み。
「やっと・・・・・目を合わせた・・・・」
そう言って・・・・黒豹が困ったように悪戯に笑う。
ああ、彼に似ている。
そんな風に強く感じながら深く深く頭を下げた。
私の・・・・短い間だったけど・・・・義父だった人に。



