「出直し」
「ふっ・・・ふふっ、本当・・・つれないぜハニー」
「では、ネット検索で【可愛い】【素直】【出会い系】と入力されーー」
「千麻ちゃん!?仮にも自分の夫がそんな出会い系とか走ってたら嫌でしょ!?」
「まぁ・・・【仮】だし、」
「・・・」
「でも、秘書としては後処理の問題として困ーー」
淡々と真顔で切り替えしていれば、私が声を発している間の百面相の愉快な事。
憤り、焦り、そして落胆。
最終的には・・・、
最後まで言葉を言い切る前にかなり強引に抱きしめられた。
一瞬、呆うけたけれどすぐに冷静になり受け身で事の成り行きを待ってみる。
その間にもギュッと力を込め私の肩に頭を預ける姿。
でも僅かばかり動きを見せると本当に微々たる接触でチュッと耳元に唇を当てた。
まぁ、コレは愛嬌。
そんな感覚で騒ぐでもなく受け入れ、いつまで抱きしめられているんだろう。と、考え始めたタイミング。
「【仮】でも・・・見放さないでよ」
響いたのは静かで、どこか切なる物。
そして、少し驚いた感覚の違い。
「・・・見放したわけでは。ただ、不毛で不憫だと思いまして」
「・・・何が?」
「それこそ【仮】である妻に気を使って操を立てるのはこの契約上の夫にすぎない貴方には酷でしょう?」
別に理解ある妻を目指したいわけじゃない。
当然、愛し合った筈の夫が浮気や出会い系にはまっているのなら憤怒もするだろう。
だけども目前のこの年若く美麗な夫は夫であって夫にあらず。
どうせ1年の仮初めの結婚契約。
私なんかに気を使わずとも今まで通りに過ごせばいいと告げたつもりだった。
あっ・・・、
コレは、
・・・・・キレた?
スッと切なさ消え鋭さ光らせる双眸。
今までの不機嫌など単なる上っ面の意思表示にすぎなかったと理解する極致。
逆鱗。
今までどこか優しく抱きしめられていた体がとても的確な箇所に崩しを入れ床に仰向けにされた。
仰ぐのはコンクリートの天井と夜空、半々の眺めと遮る様に見下ろすグリーンアイの獣。
それもかなり空腹で苛立ち見せる危険性。
でも・・・この人が酷く綺麗に見える瞬間でもある。
仕事でも女でも、狙いを定め行動した時の鋭さばかりは僅かに震える興奮を否めない。



