「・・・・・・千麻・・・・」
そう呼んでも・・・・・戻らない視線と声。
そんな中でようやく医者が駆け付けて、
「部屋から出てくださいっ、」
医師が状況を読んでかの判断で、看護婦が俺と雛華に手を添え退室を促してきて。
感情的に混乱している中で素直に従えず押し退けて、まだ彼女に釈明したくて手を伸ばす。
「千麻ちゃんっ・・千麻ちゃ・・・・・・・っ・・千麻っ!!」
遮るように看護婦に阻まれて、それでも強引に近づこうと馬鹿みたいに手を伸ばして。
そうして捉えるのは変わらない。
俺に怯え、もう視線すら絡まない彼女の今にも消えてしまいそうな弱った姿。
千麻ちゃん・・・。
俺を・・・見てよ。
「っーー千麻ぁ!!」
胸の奥から・・・もうこれ以上ないってくらいの悲痛な響きでその名を呼んだと思った。
彼女なら・・・反応してくれると。
いつだって、
彼女だけは俺の寂しさや弱さに敏感で、
いつだって・・・・、
手を伸ばして触れてくれた。
『仕方ない』
そんな・・・風な呆れた表情でも、
伸ばして触れてくれた手は優しくて、温かくて。
だから・・・・また、
伸ばしてくれるんじゃないかって。
『仕方ないですね、』
そんな風に・・・呆れてでもいいから・・・。
この期に及んで自分に都合よく期待した。
もう精神的に壊れている彼女を目の当たりにしていたのに、そんな姿にも彼女が苦痛になる期待をかけていたんだ。
当然・・・何も返されない彼女の反応。
ただ呆然とした瞬間に後ろから雛華の腕が絡んで、そのまま引きずられるように部屋から出されて扉が閉まった。
閉められた扉の向こうから医者が何かを話ている声と、追って彼女の泣き声を耳に流し込んで。
無意識に扉に近寄って触れる。
「千麻・・ちゃん・・・」
鍵はかかっていないと思う。
それでも物質的なものではない、それよりも強固な何かに阻まれてそれ以上の介入は出来ず。