思わず時間の確認。
連絡もなしにここまで帰社の遅い彼女は不自然だ。
何かあったのかと疑問に眉を寄せ、彼女に通じないなら雛華に。と電話をかける。
普通に鳴るコール音が数回。
すぐに聞きなれた声の間の抜けた返事。
『ん~、どした~?』
「ねぇ、俺の可愛い奥さんどうした?」
『ん?ああ、なんか可愛いから食べた』
「ひーたんが言うと冗談に聞こえないって学んでおこうか?」
『あはは~、』
「なんか・・・・お前上機嫌?」
『まぁね』
理由はよく分からないけど滅多に感情揺らさない雛華が珍しくその声を弾ませ反応を返す。
それでも含みを明かすでもない反応に、まぁ、いいか。と流して本題に触れる。
「でさ、千麻ちゃんどうした?まだそこにいる?」
『ううん、もう帰ったよ。心配しなくてもそろそろ戻るんじゃないかな』
「ならいいんだけど。・・・・心配で」
『茜ちゃん・・・』
「ん?」
『千麻ちゃんにストレス与えたらぶっ殺す』
「ねぇ、・・・本当に千麻ちゃんに何もしてないよね?何でそんないきなり千麻ちゃん愛護?」
『・・・・大事だから?』
「お前は芹ちゃん大事にしてればいいんだよ」
キリがない。と、通話を終えるとデスクに携帯を戻していく。
よく分からないテンションの雛華に好奇心はあったけれど、本題であった千麻ちゃんの状況確認が出来たから良しとする。
そろそろ戻る・・ね。
雛華がそう言うのならそうなのだろうと椅子にその身を預けて天井を仰いだ。
そうして悪戯に背もたれをギシギシと言わせて揺れてみる。
うん・・・・。
下に行ってみようか。
結果いてもたってもいられずパソコンにロックをすると部屋を出る。
馬鹿みたいだ。
待ちきれずに迎えに行くなんて。
すれ違う社員に頭を下げられ、それに副社長として反応しエレベーターに向かう。
乗り込んで迷うことなく1を点灯させて、下降する感覚に身を預け再び浮上するキスの記憶。
ヤバいな・・・・。
色々と葛藤も不安も限界なのに【好き】だという感情だけが強くはっきりとあって。
自分の余裕のなさに苦笑いを浮かべつつ、小気味いい到着音で寄りかかっていた体をまっすぐに起こして扉の前に立った。
そうして開いた扉からふわりと風が入り込む。



