「・・・・千麻、」
「何よ?」
「・・・・お前妊娠してるの?」
「・・・っ・・」
振り返りながら言われた言葉と珍しく驚き映す恭司の表情。
その手には私の手帳とはみ出した今日のエコー写真と妊娠おめでとうございます。と書かれた紙。
瞬時に気まずくなってその手から乱暴に奪い取ると鞄にしまいこんだ。
「・・・・・・悪い?」
ヤバい・・・なんか恭司に知られるのって死ぬほど恥ずかしいかも。
羞恥で顔が熱く感じるほどに、恭司の驚愕に動揺して言いようのない気まずさに満ちる。
そして未だ無言の彼に耐えきれなくなって口を開きかけた瞬間。
「・・っ・・・」
驚いた。
グイッと腕を掴まれたかと思えばそのままツカツカと歩き出した彼が社内に入る。
一体何事かとその腕を振りほどいて声でも牽制。
「ちょっと、何!?」
「体・・・・冷やすなよ。大事な時なんだろ?」
「・・・・・」
「このクソ寒い中何でそんな薄着だよ・・・」
「・・・・・私の周りの男は何でこうもパパ役したいのかしら」
「ん?」
「何でもない」
らしくもなく真顔で私を社内に連れ込んだのは彼なりの気づかいだったらしく、妊娠が判明してからの接する男性陣の行動に何とも言えない複雑な気分になる。
ってか、当の本当の父親が存在も知らないってのに。
「だいたい・・・今日は何の御用で我が社まで?」
「ん?ウチの社長からそちらの社長あてに、所用だね」
「では・・・さっさと社長室に向かわれては?」
「どうせ千麻のフロアも一緒でしょ?」
「なるべくあなたと行動を共にしたくないの。彼にとっての逆鱗その物なんだから」
「千麻の旦那様は余裕ないタイプだしなぁ。俺の言葉に簡単に動揺するし」
「あんたの嫌味を耳にしたら動揺するわよ普通」
「千麻は平気じゃない」
「私は免疫持ってますから」
フンと悲しいかな付き合いが長いと含めるとクスリと笑った恭司が私の頭をポンポンと撫でる。
「ま、お大事に。大切な大道寺様の跡継ぎでしょうし」
「まだ性別は分かってないわよ」
皮肉っぽい言葉に切り返すと楽しげに微笑んだ彼が重役用のエレベーターに向かって歩き去った。
その後姿を見つめ、不意にらしくない気遣いを思い出し口元が緩む。
咄嗟に手で覆い隠し自分の腹部にそっと触れた。



