これで・・・・いいのかもしれない。
そう思った瞬間でもあった。
不安が消えたわけではないけれど、それでも・・・私たちはこうして想い合っていて。
わだかまりを抱えても日常を過ごしている。
誤魔化すこともまだあるけれど、でも自然に笑う時間だってある。
これが・・・・私達であるというのなら。
不安を奥底に仕舞い込んだまま継続してもいいのかもしれない。
でも・・・まだ・・・少し足りない。
何か・・・後押しするような。
移動の車で不安の塊であったエンゲージリングを回しながら景色を眺める。
何か・・・この輝きを受け入れるための強力な後押しが欲しいと、それを探すように景色を視界に流した。
そうして走り抜けた車は見慣れた小道に入り始め、住宅地に不似合いな車が一軒の一際古い家の前で停まる。
答えは当然見つからずに車を降りると冷たい風が頬を掠める。
それに眉根を寄せてから歩き出し古びた家の玄関をくぐった。
さすがに季節的にその身は家の中だろうと、夏場はまっすぐに庭に回っていた足を玄関のガラス戸に向け。
壊れた呼び鈴を無視すると扉を横に引いて声を響かせた。
「ごめんください」
中に入って扉を閉めるとすぐに奥から見慣れた姿と聞きなれた声に出迎えられる。
「千麻ちゃん、そんな薄着で寒くないの?」
「・・・・・雛華さんは逆に暑くないですか?」
思わず呆れた声で返したのは出迎えた雛華さんがこれでもか!と言うほど暖を取った格好だったから。
上下スウェットに足元はフワフワな暖を取るための靴下で、スウェットの上からはどてらを羽織る。
ヤバいどう見てもフリーターみたいだ。
これでもあの会社の影役者であるのだから驚きだ。
唖然として立ち尽くしていれば寒いからなのか『早く入って』と促す姿に従い家に上がり込む。
キシキシとなるローカを抜けて炬燵のある部屋に通されるとすかさずその中に入り込む雛華さん。
「・・・なんか・・・情けないです」
「だって・・・俺寒さに弱いし・・・」
「そう言えば芹さんは?」
「今日は実家に遊びに帰ってる」
もう一人のここの住人の不在に疑問を投げればすぐに返された返答。
みかんに手を伸ばした雛華さんから。



