「今日、雛華のところに行く日だっけ?」
「はい、先日渡した仕事が出来上がっていると連絡を受けていたので」
「ふーん、あの仕事結構厄介だった筈なのになぁ・・・」
「・・・・・雛華さんの方が勤勉で有能という事では?」
「酷っ、千麻ちゃん?俺も有能でしょうが?」
「・・・・・無能ではないかと」
「相変わらず手厳しいハニーだなぁ」
そう言ってムスッとしながら車の後部座席のシートに身を預ける姿に呆れもするのに小さく笑う。
その声を地獄耳のように拾い上げてじろりと見てくるグリーンアイに『何か?』と無表情を向ける。
そうすれば更に不貞腐れた姿が窓の外に視線を移して不機嫌の意思表示。
本当に子供なんだから。と手帳に視線を戻しながらも口の端を上げれば瞬時に指先に絡み付いてきた熱。
驚くこともなくゆっくりと視線を隣の存在に移していけば、その視線はまだ窓の外だ。
でも・・・、
「・・・・早く・・・行って戻ってきて」
不安。
そんな空気で私の勤務中の外出に怯える彼にフッと馬鹿にしたように笑う。
「子供ですか?」
「寂しいじゃん、夫婦漫才の相方がいないなんて」
「・・・・仕方ない甘ちゃんですね。・・・はぁぁぁぁ、仕方ないので迅速に行動して帰社いたします」
「さすが有能千麻ちゃん」
「ええ、私は有能ですから」
謙遜もなく言い切れば、『カッコイイ』と茶化したように口にした彼がクスクスと笑った。
安定したやり取り。
お互いに安心する。
もしかしたら他者から見たら違和感ある時間なのかもしれない。
それでも・・・ぎりぎりの糸で結びついている絆でも、繋がっていたいのだ私達は。
お互いを壊してしまうほど・・・・相思相愛なのだ。
歪でも、体が限界を訴えても、私が無理矢理奥底に仕舞い込んだ不安が今も存在しても。
まだ・・・・左手の輝きに笑えない。
こんなに異常な程彼を愛しているくせに、
私はまだ・・・・彼にすべてを見せて身を預けるのが怖いんだ。
全てを見せられるのが怖いんだ。
なんて・・・他人から見たら・・・馬鹿馬鹿しい。
でも・・・私には重要なのだ。



