いつだって時間は気持ちによって速さを変えている。
そう感じる。
迎える先に喜楽がある時ほど遅く、
迎える先に怒哀がある時ほど早い。
でも・・・私の中では喜楽につながる道だと信じていたの。
結局社内では一言も言葉を発しなかった彼と帰宅の車で隣り合う。
相変わらず威圧的な空気を発して私の存在の介入を拒んでいると感じた。
ピリピリと痛い・・・。
胃が・・・気持ち悪い。
でも・・・・それもすぐ終わるはず。
話して、理解して、また・・・困ったように笑ってもらえれば・・・収まる。
吐く息の微々たる音にでさえ気を遣う車内で、彼のグリーンアイは一度も私を捉えなかった。
映しこんでいたのは景色なのか、自分の心の内なのか。
良くも悪くも・・・・わだかまりを持っても・・・・。
恭司の言った通りに私達には逃げ場がないのだ。
自分の負の感情を相手に知られず吐き出す場所が。
そして帰り着く。
居心地はいいけれど逃げ場のない場所に。
車を降りても終始無言で靴音だけがいやに大きく響いて、エレベーターの僅かな個室する時間でさえも苦しく長く感じる。
それでも永遠じゃない。
苦痛の時間を終えて外気を浴びて住み慣れた部屋の扉を開ければ・・・、
私と彼は夫婦なのだ。
冬の夕方はすっかり夜の装いだ。
扉を開けた瞬間こそは玄関前の明かりで明確だった室内も扉が閉まった瞬間に薄暗い。
すぐに近くの明かりを灯し足元を明確にすると、先に靴を脱いで部屋に上がった彼が上着を脱ぎながら無言で過ぎ去る。
あっ・・・。
「あのっーーー」
響かせた声。
焦燥感にかられ咄嗟にその後ろ姿を引き止めれば、ぴたりと動きを止めゆっくり振り返った姿。
そして攻撃的な威圧の緑。
『何?』
そんな風に感じる視線に息を飲んで、それでもしっかりと立ち体を対峙させる。
「・・・・・・話し合いたいんです」
「・・・・・・疲れてるんだけど?今しなきゃダメ?」
深い深い重圧の溜め息と不機嫌。
やっと発した言葉でさえも拒絶的で、必要最低限私と接したくないような。



