Side 茜
食事も終わりちょっとした他愛のない会話の隙に席を立った。
そして懸念した姿を探して店を抜ける。
この食事が始まる前に気まずい状況のまま別れてしまった彼女。
しかも食事の同席を拒んで外させた現状。
どう取られたか、助け舟のつもりだった。
ただでさえ情緒不安定な彼女をこの食事に巻き込みたくなくて、さらに言えば本当に顔色の悪かった姿。
だからこそ食事の間も彼女が気になって、やっと抜けることのできたタイミングにこうして探し始める。
どこにいるのか、店を出たところで携帯を取り出し彼女の番号を拾い上げている時。
「・・・・彼女なら、下のカフェにいますよ」
響いた声と鼻につく匂いに瞬時に眉根を寄せる。
落としていた視線をゆっくり上げれば捉える嫌味な笑み。
最も・・・彼女に近づいてほしくない男。
「必要な情報を差し上げたのに睨まれるのはお門違いかと」
「余計なお世話な情報をどうも、」
にっこりと嫌味を発する男に嫌味な笑みを返すと横をすり抜けた。
そして苛立つ事実。
多分彼女と一緒にいたという予想。
今の・・・・不安定な彼女の。
くそっ・・・。
嫌なタイミングだと彼女の状態を危惧したタイミングに追い打ちをかけるような響きが背中にかけられた。
「あまり・・・、彼女を悩ませない方がいい」
「・・っ・・・」
「・・・・驚くほどの・・・・らしくない不安や葛藤でボロボロでしたよ。仮にも夫だと名乗るなら・・・・彼女を追い詰めない方がいい」
妖艶な姿が嫌味に微笑んで毒を吐く。
まともに・・・・無防備にそれを浴びせられた。
受けた瞬間から溶けて痛んで苦しむような・・・毒。
今俺が歩いてきた道を進んでいく後姿を力なく見つめて。
立っているのもやっとの衝撃。
ねぇ・・・・俺にはあんな作った笑みで誤魔化す癖に・・・。
あいつには・・・ボロボロな本性見せて悩みを語ったの?
俺よりも・・・・・あいつの方が・・・・・全てを曝け出しやすかった?
瞬間・・・・。
疲れた。
そう感じて・・・・・・泣きたくなる。
先の見えない関係にもがいて焦って必死になっても、
彼女には理解されないのだと思って沈む。
ねぇ、千麻ちゃん・・・・。
あの時の俺は千麻ちゃんを支えられる大人になりたくて。
悩んでる全て、全部受け入れてそれでも愛してあげられるような男になりたくて。
でも・・・・そんな男になってあげられなくてごめんね。
失望してごめん。
失望させてごめん。



