それなのに期待して助けを求めた私はどれだけ正気を失っているのか。
そんな憤りを感じながら席を離れようとすればすかさず絡み付いて引き止める手と笑い声。
「ははっ、怒るなよ。冗談だって」
「あなたが言うと冗談に聞こえない」
「まぁ、座れって」
そう言って視線で今まで座っていた場所を示す彼に渋々したがってその身を下して腕を組む。
もう何も打ち明けないぞ。と視線も外して、子供の様な自分に呆れも感じた瞬間。
「結局・・・一緒にいすぎなんだよ千麻と彼は」
「・・・・はっ?夫婦なんだから仕方ないでしょ?」
「まぁ、肩書はね。それに伴って生活が一緒なのも仕方ないけどさ。結局職場も一緒で考える時間や場所がない。自分を見つめ直す場所がね・・・」
「・・・・・」
「悩んでる。彼との関係を見つめ直して答えを得たいのに、考え込む姿すら相手を失望させるんじゃないかって悩んで。
なのに、抱く感情はお互いに好意だから一緒にいればその場しのぎに愛情を持ち出して誤魔化して・・・悪循環。
それも・・・どんどん負の感情が強まる悪循環」
言葉が出ない。
まさに、と納得してしまいそうな。
言った本人はさらりとしてコーヒーを再度口に運び飲み込んで、私を捉えるとおかしそうにクスリと笑った。
「本当に・・・冷静さが欠けているね千麻。恋は盲目とはよく言ったものだよ」
「でも・・・だって・・・、」
「まぁ、色々状況や条件があるんだろうけど、一番の解決法は少し離れて暮らせば?」
「・・・・離れて?」
「勿論、別れるとかそういう意味じゃなくて、1か月くらいでもいいから、仕事は変えられないんだし私生活の場所を変えてみたら?」
つまり、
一人で考える時間や場所を作れという事?
そんな事・・・・、
離れて・・・・・暮らす?
「・・・・・・・・いいのかも・・・・しれない」
ポツリと零れたのは同調の言葉。
離れる不安がないと言ったらウソになる。
でも少なくとも毎日会社で会う。
夫婦をやめるでもないしこの指輪を外すでもない。
ただ・・・彼に気を遣わずに考える時間を得るだけ。
そしてちゃんと話せば彼も同調するんじゃないだろうか?
多分、彼も・・・私の情緒不安定に疲れてきている。
それでも必死に支えようとしてくれて。
『失望しない』
そう言ってくれた彼だから・・・分かってくれる?



