ーーーーONE DAYーーーー
お正月も明けた。
長い長い休日も終幕し、怠けた体に気合を入れて出社したのは数日前。
それでも私的には年末の重苦しい体からは解放されての出社になった。
元旦の日に軽減された自分の不安。
彼自身から申し出の取り下げに、否定を返したけれど彼はそういう意見も持ち合わせてくれているという事実が私の精神安定剤になったらしい。
それでもやはり左手の輝きを捉えれば差し込む不安にドキリとして、伸し掛かる問題に溜め息が出る。
そして瞬時に焦って取り繕うのだ。
重荷ではないと。
問題はないと。
溜め息をなかったことのように誤魔化してパソコンの画面に向かう。
そんな誤魔化し・・・・、
彼には通じないことくらい知っていた筈なのに。
いくら普段がおふざけであってもオフィスにいる間は大幅真面目な彼。
柔和なグリーンアイは仕事の時はあの黒豹に類似する鋭さを見せパソコンの画面を見つめる。
もう少ししたら集中力も低下だろうと長年の勘で判断し、5分ほどしたらコーヒーにシナモンでも添えて持って行こうと頭に思った矢先。
静かなオフィスに内線のコール音が響いて、一瞬ビクリとしてからそれを取った。
社長室つき秘書からの伝達。
その内容に一瞬眉根を寄せ複雑な心中になりながらも受話器を置いて彼に視線を走らせた。
彼の視線は相変わらずパソコンとにらめっこだというのに、私の視線を感じるとすぐに確認の響き。
「何だって?」
「社長室からです」
「ん~、」
「・・・大塚コーポの社長と副社長が新年のご挨拶に見えられているから社長室に来い、との伝達です」
多少の緊張と警戒。
気を張って口にした会社名に見事反応を示した彼の深い深い溜め息。
別にその会社が問題なんじゃない。
社長や副社長も問題ない。
あるのは・・・・・私の同業者だ。
「新年早々あの匂いはきついなぁ・・・・」
「はぁ・・・」
「あの笑顔も本当に精神的に受け付けない」
「私にそれを言われても・・・」
まるで私が悪いかのように顔をしかめて席を立つ姿に異を唱えて。
勿論自分の非を認めている彼が苦々しく『ごめん』と返す。
だって・・・元カレはあくまでも【元】で私の管理外の存在ですから。



