夫婦ですが何か?





そして意を決するように息を吐くと数秒私でない空間を見つめ、そしてゆっくりとグリーンアイが私を映しこんだ。


絡んだ視線、でもすぐに僅かにずれ私の杯を持つ手にそれが移る。


多分左手の輝きに。



「・・・・・ねぇ、」


「はい、」


「もし・・・・その指輪が・・・今の千麻ちゃんに重荷であるなら、・・・無理してつけなくていい」


「・・・・」


「プロポーズも・・・・忘れていいよ・・・」



あっ・・・ざわめく。


心臓が急発進して全力疾走したように焦る。


待って、・・・ちょっと待って・・・・。



「っ・・・待って・・・・」



ごとりと鈍い音がして、すぐに足にじわじわと冷たい感触。


自分の持っていた杯がラグの上に転がって、中身であった酒が自分服に染み込んだ。


でもそんな事に意識も走らない程必死に彼に詰め寄って、酒を持っていた筈の手が彼の服を掴む。


私も焦った顔をしていただろうけれど、掴まれた彼も同じほど焦りと動揺を見せていて。


それでも彼の焦りを後回しだと自分のそれを口から零した。



「それって・・・、私の・・・せい・・・、私が・・・」


「千麻ちゃん・・・」


「私が・・・私の態度が・・・あなたを失望させましたか?」


「違う・・・ねぇ、落ち着いて・・・」


「私が・・・・情緒不安定だから・・・・あなたの望む反応を出来なかったから?」


「千麻ちゃん・・違うから・・・ね?」




どうしよう・・・どうしよう・・・どうしよう・・・。


見放されたくない。


これ以上彼から失望される自分になりたくないのに。


焦燥感・・・。


彼の否定の声さえ届きにくくなる程に。




「私が・・・・役立たずだから?」


「・・・・」


「私が・・・・・まともに欲を満たせなくなったから?」


「千麻っ」




一瞬の驚きの後に冷静さの回帰。


響いた声の鋭さとグリーンアイの鋭さと・・・、


両頬に小さくじりじりとした痛み。


その頬を包むような彼の両手。


名前を呼ぶと同時に軽めに両頬に与えられた刺激で正気になって、綺麗で鋭いグリーンアイを見つめた。