純粋に憧れた瞬間でもあった。
この2人みたいに穏やかに過ごせる関係であれば、夫婦もいいな。と。
確かにこうなりたいと・・・私と彼もこうなりたいと思う気持ちは存在しているのに。
「なんか楽しそうだね~」
笑い声を響かせた直後に『混ぜて~』とばかりに近付いてきた気配に反応して視線を移す。
そうして捉えた姿はさっきの様な困ったものでなく純粋に楽しげに微笑んでいる物で、視線が絡むと更ににっこりと微笑んで見せる。
「何の話で盛り上がってたの~?」
「芹さんの妊娠話をお題に2人の夫婦漫才観覧してました」
「いやいや、2人のそれには敵いませんから」
「決して漫才をしたわけでは・・・、ただ雛華さんが常識外れで・・・」
「芹ちゃん!?ひどくない!?」
その瞬間にほぼ同時に私と彼が噴き出して笑う。
ああ、普段2人が私たちに感じるのはこれか!と理解した瞬間でもあり、今までの私たちは本当に他者から見たら穏やかな夫婦像だったのかもしれないとも思う。
クスクスと笑いながら一瞬彼と顔を見合わせた。
ああ、こうやって純粋な笑みでお互い顔を合わせるのが久しぶりに感じる。
どこか気まずかったこの数日、だからなのか彼もその瞬間に張っていた緊張の糸を緩めた気がした。
安堵して楽しそうに笑う。
あっ、この人のこの笑顔が好きだ。と、強く感じるほど。
「ところで、もう性別は分かるの~?」
「それはもう私がお聞きしました。まだだそうです」
「えっ、じゃあ、触ったらうごーーー」
「ーーきません。芹さんにしか分からないそうです」
「ねぇ、いつから芹ちゃんのマネージャーになったの?千麻ちゃん」
「セクハラな上司の不祥事を未然に防いでるだけです」
「俺をなんだと思ってるわけ?」
「・・・セクハラな社長の血を引くセクハラな副社長でしょうか」
すっぱり淡々と切り返せば今度はやり取りを見守っていた2人が噴き出し夫婦漫才の入れ替え。
どこか和んだ。
芹さんの生命の神秘のおかげだろうか?
触れた先から心が緩和して、今この時は久しぶりに彼に対しても柔和な態度を取れて。
そうして【当たり前】の時間を刻めば彼の表情や態度も【当たり前】に戻る。
ああ、この空気だ。
この空気が・・・・・私と彼の安定した位置関係と空気。



