「茜・・・・彼女の今の迷いに名前を付けるならな・・・」
「ん~・・・?」
どこか可笑しそうにも聞こえる父の言葉に力なく声だけ反応すれば。
「【マリッジブルー】」
「・・・・・もうそんな期間終わってると思ってた」
「すでに名前ばかりは夫婦で縛られてるけどな、彼女にとっての今までのそれは【仕事】の意味合いが強かったんだ。良くも悪くも1年で終わる夫婦関係。だから結婚という概念なしに成された【結婚】が今までな」
「つまり・・・・俺のプロポーズで良くも悪くも初めて結婚の意味考えてブルーになってると?」
「まさに」
「本当・・・・今までの夫婦生活何なんだよ・・・」
「さしずめ・・・同棲?それも真剣な意味合い無く楽しければ今はいいんじゃない?的な・・・・」
「絶望的な事あっさり言わないでよ・・・」
嘘だろ。と力なくその場に座り込んで頭を抱える。
でも納得してしまう。
父の言ったことはどれも的確で俺の抱いていたモヤモヤした葛藤も『それだ』と頷いてしまうほど。
でも、
でも、やっぱり・・・・、どうしていいのかわからないよ千麻ちゃん。
結局解決策が分からない事態に迷走だと、項垂れて頭を掻きむしれば。
さすがに哀れだと思ったのか父としての助言が耳に印象強く入り込む。
「茜、・・・・今が・・一番重要で慎重になるべきところだぞ」
「分かってる・・・」
「真面目に。・・・・・・判断を少しでも間違えたら」
「・・・・」
「彼女を失うぞ。妻としても、・・・・・秘書の彼女でさえも」
「・・・・・忠告、ありがとう」
珍しくその目にふざけた印象無く告げられた言葉。
震えてしまいそうな程説得力ある助言に力なく口の端を上げて負けず嫌いの意思表示。
本当は折れそうなくらい追い詰められて、彼女を疑いなく想う心に疲労が見える。
なのに・・・・、手放す恐怖には及ばなくて。
絶対に・・・・失いたくない。
俺が望むのは今までのようにただふざけて言い合って馬鹿っぽいけど穏やかに過ごしたい。
それだけなのに・・・・。
皮肉だ、【結婚】や【夫婦】なんて縛りで彼女と距離を縮めたのに、今度はその言葉で溝が出来るなんて。
千麻ちゃんの愛情は感じるのに・・・・・、
もしかして、・・・・・本当に同情の類だったんじゃないかって時々不安になる。



