そしてあの夢の敗北。
不妊に終わった時から彼女の情緒不安定が強まった。
俺も馬鹿じゃない。
彼女の悩みが子供が出来ていなかったショックだけじゃない事は分かってる。
根本はやはりこの結婚の始まりに繋がってて、良くも悪くも俺と彼女の結婚生活より長かった関係。
そうは理解してももっと繊細で複雑な彼女の心情。
事細かい部分まではさすがに手が出せず、理解も出来ず、それでも抱き合えば感じる愛情。
触れ合って会話すれば確かに俺にある気持ち。
己惚れではなく彼女の気持ちはしっかりと捉えて、俺なりに考えて、この関係を中途半端な物でない物にしようと彼女に告げた。
そしたら・・・。
俺の判断ミス。
繊細に張っていた彼女の感情の糸を悪戯に絡ませて怯えさせる結果になった。
そしてそんな彼女に責めることも怒る事も謝る事も出来ず・・・ただ、落ち着くまで成行きに任せていたここ数日。
多少の疲労とチラチラ垣間見る限界。
いっそ『嫌い』だと別離された方が納得いくんだろうか?
深く重いため息で回想した負の感情を吐き出した。
その溜め息にすべてのやり取りが映り込んでいるかのように俺を見つめる父さんの複雑な笑み。
思わずその含みに答えを求めて縋るように言葉が零れた。
「分からないんだ。・・・・どうしたら千麻ちゃんが悩まないのか、・・・・・俺がどう接していいのか・・・」
「・・・・千麻ちゃんは・・・真面目だからなぁ。一度作り上げた物を壊して新たに作り直す事が怖いタイプだ」
「・・・知ってる」
「だからお前との関係もその対象って事だな。彼女の中でお前と自分の理想的な対比や関係が出来ていて、お前との婚姻関係の継続はその理想を崩しかねない。
好きなんて理屈じゃ・・・・いや、好意があるから・・・お前に対して理想が崩れるような事態になりたくないんだよ」
「・・・・・・・・・でも、・・・それって俺はどうにも出来なくない?彼女の心次第って事じゃん」
理解はしても納得しがたい。
好きだけど、理想的じゃない部分を見てしまったら嫌いになりそう。
だから怖くて結婚できません。って・・・。
「意味わかんね・・・」
ますます動きが取れないと、落胆して顔を覆う。
深く深く溜め息をつく横で父が苦笑いでクスリと笑った。



