今まで甘く感じていた匂いも味覚も苦く変わって、
ぼんやりと鈍っていた思考に冷静さの浮上。
彼に密着していた体を離し、また何の行き過ぎた言葉遊びだろうと苦笑いで視線を絡めて・・・。
不安の浮上。
まっすぐ、真剣なグリーンアイに射抜かれ取り繕った笑みが瞬時に掻き消された。
「ねぇ、真剣に・・・・契約じゃなく、俺の家族になってください・・・・・」
再度明確に響く言葉は結論の要求。
猶予があると思って甘さに逃げようとしていた私から取り上げられた痛み止め。
「・・っ・・・何を・・・・だって・・、契約完了までにはまだ時間がーー」
「もう・・・限界なんだよ」
「・・・」
「千麻ちゃんが好きで・・・苦しいくらい愛してるのに最初の条件がそれを不完全にして。・・・・・・・・・俺は、確かな絆を千麻ちゃんと深めたい・・・・」
「・・・っ・・・だって・・・そんな事・・・」
困惑する。
彼の真剣な声や表情に。
苦悶にも見えるグリーンアイの真剣さに、
怯む。
完全に無防備にぶつけられた現実に怯んで眉尻を下げれば、それを労わるためなのか彼が離れた体を再度抱きしめてくるのに。
なのに・・・・余計に鼓動が速まる。
「・・・・2か月・・・考えてたんだ。悩んでる千麻ちゃんを・・・どうしたら楽にできるのかって・・・・」
「・・・茜、」
「迷って悩んで・・・、でも行き着く答えは一緒で・・・俺は千麻ちゃんとずっと一緒にいたくて・・・・・それこそ、・・子供作ったりしてもいい・・・家族になりたい・・・・」
だって・・・待って・・・。
「でもそれをするには・・・、俺たちは不完全すぎて・・・・、それが原因で・・・・千麻ちゃんも悩んで・・・、」
そうよ・・・悩んで・・・迷ってる。
だからこそ・・・考えさせて・・・時間が欲しいのに・・・。
「契約なんて・・・・取り消そう」
「・・っ・・・・・」
「・・・・・・俺と・・・・結婚してください」
ギュッときつく抱きしめれた体。
心臓が痛いくらいに早くて苦しくて眉尻が下がる。
息が・・・・苦しい。
抱きしめられているせいかと思った。
でもゆるゆると解放された体も呼吸困難を訴えて、そんな私の呼吸を完全に止めた物。
「・・・本当は・・・・クリスマスに言うつもりだった・・・・」
「っ・・・・」
冷たい。
そう感じた左手の薬指。
もうすでにその場所は夫婦の証で繋がれているのに。
加わった光を通してキラキラと反射する透明の石が。