ねぇ、そろそろ魔法の効果が出るでしょう?
「・・・・・不味いけど・・・最高に甘い絆だわ、茜」
ほら・・・ね。
一瞬で上がる口の端。
きっと、本当はもう少し不機嫌を現わしていたかったのでしょう?
でも、あなたは私の口にする魔法に勝てたためしがないんだから。
「お礼は・・・・千麻ちゃんからのキスでいいよ」
「何の罰ゲームでしょうか?不味い物食べさせられその上不本意なキスをしろと?新手のDVですか?」
「そんな悪態つくほど俺を愛してるんだねハニー」
「・・・・・・っ」
一瞬、いつものように悪態を返そうとした。
でも未熟ながらも彼の魔法だったのか。
ジワリと効いた甘い魔法。
モルヒネ効果なのか・・・。
開きかけた口を閉じじっと悪戯に揺れていたグリーンアイを見つめた。
彼も普段なら返される嫌味の不在に疑問を表情で返して、それを捉えた直後に全身に魔法作用。
クラリと逆上せる。
スッと両手を伸ばして彼の両頬を包むと追って唇を重ねた。
甘くて苦い。
そして林檎の味も交じるキス。
今も・・・・・・時々思い出すのよ。
「千麻ちゃん?」
「・・・・・・・ありがとう。・・・・・・好きよ・・茜」
言わずにいられなかった感情を素直に弾けば、息を飲んだ彼がぎゅっと私を抱きしめてくる。
匂いすらも今日はいつものそれでない。
嗅覚も味覚も強烈な印象が焼き付いて離れない。
訂正・・・。
完璧な魔法だったわ。
下手に完璧なアップルパイよりずっとずっと強力な。
夢を見るほど・・・・、不確定な夢を見るほど。
毎年・・・・全く上達しない彼のアップルパイを詰って皮肉って・・・・でも、笑って食べる。
ああ、また・・・・・馬鹿な夢を見てしまう。
でも・・・まだ時間はあるでしょう?
もうしばらくは・・・・ただ、甘いだけの夢に浸らせて。
「千麻ちゃん・・・・」
現実的な悩みも掻き消すくらいの、
「ねぇ、・・・・聞いて、」
私の不安が・・・なくなるまで、
「好きだよ・・・、愛してる・・・千麻」
甘い夢で誤魔化して、
「だから・・・」
私が迷いを無くすまでもう少し時間をかけて・・・。
「俺とずっと夫婦でいて・・・・・・」
あっ・・・・。
強烈に・・・・、
苦い・・・・。



