夫婦ですが何か?



不格好。


不完全で形を成してなくて中途半端。


そして甘い中に苦味もあって・・・。


ああ、本当・・・・・私たちの絆の様なアップルパイですね。


本当に・・・・これがお得意の魔法と言いたいのならやはりあなたはまだまだ未熟な弟子だという事。


夫としても。


でも・・・・でもね、



「・・・・・大失敗ですね」


「・・・・・ごめん、」


「正直、未知との遭遇でした」


「・・・・ごめん、」


「強烈過ぎて一生忘れない・・・」


「ごめん」


「だから・・・・・本来の、このアップルパイをいつか食べてみたいですね」


「・・・・・」



スッと上がる驚きに満ちたグリーンアイ。


それに『何か?』と微笑むでもなく真顔で見つめてから彼の手にある皿から無残な現状のアップルパイを口に運ぶ。


うん・・・・苦い。


食感も悪い。


変にべたべたでふにゃふにゃで不確定で・・・。


でも・・・・、不安定でも・・・・愛情は感じますよ。



「ん・・・まずい・・・・」


「千麻ちゃん・・・・そんなはっきりと悪意に満ちて言う?」


「じゃあ、・・・どうぞ、」



眉をしかめてはっきりと不味いと口にすれば、不満げに眉寄せた彼に食べかけのそれを近づけた。



「・・・・」


「どうですか?」


「・・・・・・こ、個性的な味?」


「随分厚いオブラードに自ら包みましたね」


「っ・・・・ああ、もう、不味いよ!認めるよ!!どうせ俺は未熟な夫ですよ!」


「逆ギレ・・・・」


「すみませんね・・・・」



フンとさすがに不貞腐れて顔を背けた彼に小さく口の端を上げる。


本当に困った人だ。


完璧になり切れない人。


でもだからこそ・・・・私が傍にいないと。って思え自信が芽生えるのを気がついてますか?


そして・・・モルヒネ。


まだ・・・・・時間はある。


まだ、自分の結論を考える時間はある。


まだ、・・・誤魔化して彼の与える甘くて温い時間にただ流される時間は・・・。


スッと手を伸ばし横を向いている彼の頬に指先で触れた。


付着する白い粉を擦って落とすと、どこか気まずそうな彼のグリーンアイが私を捉える。


でもまだ『いじけてるぞ』の意思表示。


なら・・・・私も魔法を使いましょうか?



「未熟でも・・・・・夫婦ですが?」


「・・・・・・」


「少なくとも・・・・・努力賞程度には絆は深まったのでは?」



言いながら手の中にあったアップルパイを食べきると、一瞬苦味で眉根を寄せつつすぐに口の端を上げてみた。