でも、これが何なのかは十分に分かった。
何でありたかったのか。
「・・・・・アップルパイですか?」
「うん、一応そのつもり・・・・・だったんだけど」
半信半疑で口にしたものを言い当て眉根を寄せれば、苦笑いの彼が今ほど私に食べさせたものをようやくお披露目。
訂正。
焦げた味はパイ生地も原因だったか・・・。
そして捉えた完成品から予想するに・・・。
「・・・・バターとマーガリン・・・間違えましたね。生地が緩かったのはそれが原因です」
「えっ?あれって別物?」
「はい、そして製菓用のそれじゃなく有塩な物使いましたね。油分が多すぎてさっくりと焼き上がってもいない。あと・・・・林檎のフィリング、よそ見でもしましたか?砂糖が焦げてカラメルどころの苦味じゃないです」
「・・・・・・・・すみません」
「本当に才能無いですね」
「うん・・・家ではあまりの才能の無さにキッチン出入り禁止令が出てたほどに・・・」
「・・・・そんな人の作ったものを食べさせられた私って何の実験台でしょうか?」
「だって・・・・・だって・・・クリスマスだし・・・」
「はぁ?それがこのアップルパイと何の関係が?」
全く繋がりが感じられない彼の言葉に疑問を返す。
彼と言えば自分の頑張ったけれど無残に仕上がったそれを消沈しながら見つめていて、小さくいじけたように息を吐くと含めていた感情を口から零す。
「・・・・・やっぱり・・・不完全」
「はっ?」
「こんな風に繋がりも不完全って事なのかな?」
「・・・・・意味が分かりません」
「・・・・・・・このアップルパイさ、・・・・ウチの伝統」
「伝統?」
「・・・・・クリスマスの日に・・・ウチの家系ではその家の主である父親がアップルパイ焼いて家族に食べさせるんだ」
「・・・・・」
「そのレシピはさ・・・その家の男にしか受け継がれなくて、1年に一度・・・・家族にその味を振る舞うんだ。また来年も、・・・・ずっとずっとこうしてみんなで食べましょう。って意味で、・・・・家族の絆を確認しながら」
「・・・・・甘い・・・・絆・・ですか?」
「うん・・・・でも、俺のは不完全で不格好な苦みのあるものだったね」
ごめんね。
そんな風に困ったように微笑んだ彼が視線を不格好なアップルパイに落とした。



