堂々巡りだと、ため息を一つついて締めてみる。
ゆっくりと気怠い体を起こすとジワリと生暖かい物が足を伝う。
一瞬その違和感にも片手で頭を支えながら溜め息。
それでも・・・・・馬鹿だ。
彼に愛された確かな証拠だと感じて口の端を小さく上げ寝室のクローゼットにのそりと歩いて行った。
堕落した日常は甘すぎて誤解する。
元々私は・・・・仮の妻であった事を自覚した時には虚無の中。
ねえ、また・・・
不完全でも甘い夢を見せて・・・・。
彼が出掛けてから1時間半だろうか?
さすがに身だしなみ整え妻として生活の役割を果たし、コーヒーを口にしながらパソコンで急ぎでもない仕事に手をつけていた頃。
パソコンのキーボードの音に混じった聞きなれない響きに手を止めた。
止めて確かめるように耳をすませば、コンコンと再度同じ音が繰り返される。
何だ何だ?と振り返れば、その音に加わる人の声。
『開けて〜!千麻ちゃぁん』
叫ぶな。
近所迷惑だ馬鹿。
と、呆れて眉根を寄せ、面倒だと怠そうに体を立ち上げるとリビングを横切る。
その間も玄関を叩く音と響く彼の声。
チャイムがあるのに何故?と、疑問を感じながら玄関の前まで近づいた。
『千麻ちゃぁん、千麻ちゃぁん、ハニー、開けて〜』
煩いなぁ。
「・・・失礼ですが部屋をお間違いでは?」
『うっそ・・・、俺だよ?君のスィートダーリンのご帰還だよ』
「新手の詐欺でしょうか?おれおれ詐欺の配偶者版的な、」
『酷い!真面目に!手が・・・、落ちるっ』
酷く焦った響きにさすがに何事かと眉を寄せて鍵に手をかける。
そして彼が望んだように扉を開けた。
のは、良かった。
でも・・・反省。
勢いよく開けた扉はどうやら何かに焦っていた彼には不都合だったらしく。
慌てている彼に見事扉がぶつかりその瞬間にゴロゴロとその場に何かが転がる。
赤い赤い【何か】。
そして大漁の。
何故?
疑問に感じながら足元に散らばったそれを一つ手に取る。
彼と言えば両手首に買い物してきた大荷物を下げ、必死に転がった物にも意識走らせるワタワタしていて。
荷物か、拾うかでパニックらしい。



