「・・・・・・どうするのよ?千麻、」
むしろ・・・・どうしたいのよ?
そんな自問自答は当初は持ち合わせていなかった。
それでも彼のベクトルが私を恋愛として捉えはじめてから小さく浮上してきていた。
でも、いくら求められようが態度で示されようが根本の契約は揺るがない筈だったのに。
いつから?
自分でも悩んで揺れる契約の条件。
1年で終了予定だったこの夫婦生活。
なのに契約なんてお構いなしに関係を進める彼に気がつけば度々私も流され、まだ時間はあると誤魔化してその一瞬に臨んで我に返った瞬間にこの自問自答に陥る。
そしてその回数を追うごとにどんどん迷走して情緒不安定だ。
そっと腹部に手を当てる。
何もない、ただの体の器官の一部にしか過ぎないそこ。
でも確かにそこに淡い夢を抱いた瞬間があった。
その夢が本当に泡のようにはじけた瞬間、困った事に夢から醒めきらない自分が奥深くにいて。
違う、生まれてしまっていたんだ。
すでに母親になりたかった自分が。
彼と本当の意味で繋がれる子供が欲しかった自分。
だからこそ・・・・子供を求めてではない行為に虚しさを感じて、快楽を得て彼の存在を愛おしいと思うのに余計に切なくなる。
契約の夫婦として愛を深めてもいつかは終わる。
じゃあ、何の為に深める必要があるのか?
だったら素直に夫婦として関係を続けると決意し、本当に彼が望むようにまた子供を求めればいい。
なのに、その感情に皮肉にも作用したのはあの不妊。
どこかでドリーミーな私は傲っていたんだ。
彼と私は特別であって、2人で望んだ事は絶対に形になる存在なのだと。
どんなに微々たる希望の結果でも・・・それに勝ち進める2人だと。
「馬鹿な・・・夢想・・・」
本来、始まりは抜けた穴埋めのピースでしかなかった私。
そんな自分と彼が特別であるという感情だって仕事の上でしか持ち合わせていなかったというのに。
仕事だけでよかった。
書類の上での結果は予想しやすいから。
形にしやすいから。
理性的に、
いつだって彼の望むままに支えて結果を生み出せたから。



