一体何の買い出しに行くというのか。
彼と買い出しという組み合わせがすでに異色で、しかもこのタイミングだ。
ポカンと彼の奇行をその場に座りこみながら見つめていると、絡んだグリーンアイが悪戯に笑って言葉を弾いた。
「一年に一度の甘い絆を教えてあげる」
得意げな響き。
それでもまだ分からない彼の言葉に片眉をあげると、満足そうに笑った彼が再びあのクリスマスソングを口ずさみながら寝室に消えた。
そして微かに聞こえる音で王子様はお召し替えだと分かる。
甘い・・・絆?
比喩なのか本当に甘い何かであるのか。
ぼんやりと言葉の含みを探ってみても私一人で答えを得られるでもなく。
ただ一人この場で答えを知っている彼はクローゼットで何やらゴソゴソと物色中だ。
時折、『あれ~?』『おかしいなぁ』など疑問の響きである言葉が耳に入り込む。
考えてもここは素直に彼の悪戯的発想に乗るしかないのかと、力なく乱れた髪をくしゃりと掻いて何気なく外の雪景色に視線を走らせた瞬間。
「じゃ、行って来るから」
そう言ってリビングの扉から顔を出した姿が満面の笑みで私に微笑む。
どうやら目的の物が見つかったらしい。
一体何を探していたやら、買い出しに必要な何かだったのか。
「・・・・いってらっしゃい」
「うん、あっ、帰ってくるまでにはちゃんと服着替えておいてね。風邪ひいたら大変じゃん」
「風邪ひかせるような行為に走ったあなたに言われたくない注意ですね」
非難するように睨んでみても何やら楽しげな彼が一声笑い声を零すと、カチャリと車のカギを鳴らして玄関から消えていった。
気配が急に静まる。
シンとした部屋にTVの音や生活する最低限の音が響くだけで、さっきまで強烈な熱や存在を感じていた相手の不在。
瞬時に物悲しいと感じた私は末期なのだと悟って深く深く溜め息をついた。
身についた生活習慣。
当たり前になっている行動。
全て全て2人分。
私と彼の2人分。
さっきだってそう。
別にソファーがあるのだから隣に座る必要はなかったのに、それが当たり前のように並んで身を置いて。
キスもセックスも、特別な物ではなく当たり前の事になってしまっている。
例えるなら・・・・食事や入浴のように。
もっと言うなら・・・・・・こうして息をするのと同じように彼の存在を感じるのは当たり前の事になっているんだ。



