「千麻ちゃん?・・・・大丈夫?」
響いた声にビクリと体が跳ね扉を見つめた。
いや、扉の向こうにいるであろう彼を感じた。
何と響かせていいのかわからないそれに無駄に唇だけが動いて音が出ない。
そんな無言にさすがに違和感感じたらしい彼が不安を交えて再度の呼びかけ。
「千麻ちゃん、ねぇ?本当に大丈夫?」
「っ・・・・・」
手が震える。
大丈夫だと返したくても全然それを証明できない自分の動揺。
でもこれ以上の籠城や無言は変に彼を不安にさせると、深く息を吸って吐くと扉に手をかけ鍵を開けた。
ゆっくり扉を開けば眉尻下げた彼の不安顔。
その顔を見た瞬間に気丈にふるまって笑うつもりが・・・・。
「っ・・・・・ふぅっ・・・・」
「・・っちょ・・・千麻ちゃん?どうした?」
決壊。
涙のダムの。
咄嗟にそれを隠すように手で覆っても次から次へと溢れ出す涙と嗚咽。
私の突如すぎる感情の決壊に理解が追い付かない彼が目の前でひどく動揺して、それでも私を宥めようとその手がそっと肩に触れて。
優しく作用した彼の熱の接触にもう限界だと得た賭けの答えを告げた。
「・・・・・っ・・・た・・・」
「えっ?」
「生理・・・・・・・きた・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・すみませ・・・・あなたの赤ちゃん・・出来てませんでした・・・・」
「・・・・・・」
すみません・・・・。
ごめんなさい。
「っ・・・・出来なかったぁ・・・・・」
嗚咽交じりのとぎれとぎれな賭けの結果。
違和感感じ確認した瞬間に自分でも驚くほど落胆し脱力した。
同時に・・・・・彼の望みに応えられなかったというショック。
そしてどこかで・・・・気づかない程・・・・、こんな風に泣いて打ちのめされるくらい私もあの夢に思い馳せていたのだと気付く。
出来ていなかった。
考えて見たらここまで泣き崩れるほど妊娠を望んでの行為じゃなかったのだから当然と言えば当然。
どちらかと言えばこの結末の方が大きく強かったのに。
さっきの・・・・雛華さんと芹さんの影響?
あの時・・・・・・羨望した。
幸せそうに家族のつながりを得た2人に。
ああ、どうしよう・・・・。
悲しい・・・・。
凄く凄く・・・・、
悲しくて・・・・苦しいのよ、ダーリン。
「・・・・フッ・・・・」
「・・・・・・・」
「なぁんで・・・・謝るかなぁ?」
柔らかく耳に響く声。
反応して顔を上げれば労わるように微笑む彼の表情を捉えすぐに優しくその腕に抱きしめられた。



