「・・・っ・・・・・芹ちゃん?」
「・・・・」
「・・・えっ?・・・ねぇ、・・・もしかして・・さ・・」
半信半疑。
でも限りなく確信得ての響きだろう。
それでも本人の口からそれを確認したくて、よろりと一歩彼女の彼が近づいた瞬間。
「雛華さんの・・・馬鹿」
「・・・・っ・・・・ごめん!」
声が先か、走り抜けたのが先か。
私の横をすり抜け床に座り込んでいた芹さんに詰め寄った雛華さんが、愛おしむように両頬を包んで感極まった笑みを浮かべる。
そんな顔されたら・・・・、ああ、そうですよね。
怒った表情なんてもう継続できない。
芹さんも限界とばかりに微笑んで、雛華さんの頬を戒めのように軽く摘まんだ。
「ごめん、ごめんね。・・・でも・・・・どうしよう?反省よりも嬉しい気持ちのが勝ってる・・・」
「覚えてないって・・・・凄く面白くないですけど・・・・、でも、私も嬉しくて仕方ないです・・・・・・。
雛華さんの赤ちゃん妊娠できて嬉しい・・・・」
あっ・・・・、
理想的。
家族の瞬間。
目の前で終幕した夫婦喧嘩と、それに得た幸せの瞬間。
なんだか一家族のお手本を見せられたような瞬間に腕を組んで見守っていれば、スッと隣に並んだ気配に妙に気まずい。
チラリと視線だけ横に走らせれば瞬時に絡む意地悪な微笑み。
クソッ・・・何か言いたげ。
「・・・・で?お昼を食べそこなうほどの問題は解決した?ハニー」
「さぁ、どうでしょう?まだ真昼間からホテルに入り込む釈明がされてませんから」
「フフッ、随分詳しく俺の動向把握してるんだね」
しまった。
思いっきりつけていたのバラしてしまった。
自分の後ろめたい行動に返す言葉もなく、ただ気まずい視線に耐え忍んでいれば。
「ホテルには行ったよ。芹ちゃんがランチ後に体調悪くなって、」
「・・・・・・あっ、やっぱりあれはよろめいてですか?」
「ん~?ふふ、レストラン出たところから探偵ごっこ?」
「・・・・・」
「まぁ、いいか。で、よろめいた芹ちゃんが真っ青だったから体支えて歩いてホテルに向かった。って言うのが俺の言い分なんだけど・・・・・・・・、何か異議申し立てたいなら聞き入れる」
「無いですよ!!本当に嫌味な人ですね!」
「え~、逆ギレ~?」
怒ったような口調でそう言い切って反対を向けば、困ったように笑った彼の反応に後ろめたくて仕方がない。



