「だから・・・・・千麻に触んじゃねぇよ・・・」
あの時と一緒。
ポタリポタリ、どこから降ってきたかわからない水滴を感じて。
何事かと状況を把握するべく視線を走らせれば、私以上に水害被った雛華さんを捉えて。
そして・・・・酷く不機嫌な彼の姿を捉えるのだ。
空のグラスを持ったとてもとても不機嫌な彼を。
「浮気者・・・・・」
目が合った瞬間の第一声。
色々と反論はあれどまだ動揺している頭では何が優先かわからずぼんやりと見つめ返して不動になると、深く溜め息をついた彼が同じように呆然としている雛華さんの首根っこ掴んで私から引き離した。
「あ~・・・・茜ちゃんだぁ・・・・」
「・・・・・千麻ちゃん・・・、雛華にワイン飲ませた?」
何故かされた事に怒りもせずにへラッとして彼に抱き付いた雛華さんに再度息を吐いた彼が私に視線を向ける。
それに数回頷いてワインボトルに視線を走らせると。
「雛華・・・お酒自体は強いけど、ワインだけは一気に限界まで酔うから」
「い、痛い程・・・理解しました・・・」
「そんで・・・、多分、千麻ちゃん押し倒した記憶ないから」
「・・・・・・」
「犬に噛まれたとでも思って忘れちゃって、」
そう言って雛華さんにチェイサーで用意していた水をグラスに注いで手渡す彼を呆然と見つめる。
脱力。
完全に脱力だ。
消えることが無いと思っていた憤りさえ皆無の。
酔いさえ醒める・・・・・。
「千麻ちゃん・・・」
「・・・・・」
「帰ろう?」
声に反応して顔を上げれば、スッと真顔で差しのべられた手。
何の意識もなくただ差しのべられたからその手に自分の手を乗せて絡めれば、瞬時に切り替わる表情。
ニッと悪戯っぽく笑う彼の。
「全部全部・・・・誤解だよ」
「えっ?」
「愛してるのは・・・・・、訂正。
愛してるよハニー」
馬鹿・・・・。
だから・・・臭いのよダーリン。



