そしてお互いのグラスを小さく掲げて意味のない乾杯を示し口に運んだ。
口内に広がるワイン特有の甘味と渋み。
これもまたいいワインだと銘柄を再確認。
今度彼とも飲もうとその瞬間を想像して現状を思い出す。
ああ、私の馬鹿。
絶賛喧嘩中だったのを忘れてあるかもわからない時間を想像してしまった。
馬鹿らしいと手にしていたボトルを静かに板間の上に置く。
そうして何の気なしに隣に座っている彼を振り返り思わず見とれた。
ぼんやりと月を見上げて、普段から綺麗なグリーンアイを月明かりでより綺麗に映し出す。
そうだ、
この人はこういう人であった。
自然に近い緑の持ち主。
彼が磨かれ価値のある宝石のようなグリーンなら、雛華さんは原石で、自然で、知る人だけがその価値を知っているような。
そんな垣間見る輝きに私も惹かれてこの人を好きであったんだ。
「好き・・・・なんだけどなぁ・・・・」
「えっ?」
不意に雛華さんが呟いた言葉に反応し、庭に移しかけていた視線をゆっくり戻した。
捉えた雛華さんはまだ月を見上げていて、でもすぐに下降した視線が庭の一角を捉えて不動になる。
ああ、見なくても分かる。
この庭で雛華さんが一番愛情かけて育んでいる物。
彼女を示した・・・紫の夕顔の位置。
「・・・・・・・好きって・・・精一杯言ってれば、・・・・もうすれ違う事なんてないと思ってた・・・」
零れた雛華さんの寂しさの塊。
あんな風に感情的に彼女に啖呵を切っても、やはり好きで好きで今も全力で恋しいのだと伝わる。
なのに・・・並んで座るのが私ですみません。
「・・・・・・・【嘘つき】・・・かぁ」
「・・・・・ついていないのでしょう?」
「俺が把握する限りでは・・・・、芹ちゃんに嘘なんて・・・・絶対につくはずないのに・・・・」
泣きそう。
声が震えている。
それに気がついたのは彼本人もだろう。
誤魔化すようにグラスの中身を一気に煽るとすぐに並々とグラスを満たした。
ゴクリゴクリと喉を流れ込むワインが上手く負の感情を流し込んでくれないのか、グラスの離れた唇から深いため息が零れて静寂に響く。
そんな中ふわりと風が吹き抜けて、夏の名残である風鈴が寂しげにちりんと鳴る。



