「月が綺麗ですね・・・」
「・・・・・・夏目漱石?」
「ふっ・・・・本当だ。別にロマンチックな意味でなく見たまんまの感想です」
2人並んで縁側に座り、さわさわと風に揺れる草木の音を耳にしながら月見酒。
もう何度も雛華さんとはこうして並んでこの縁側から庭を見ていた筈なのに。
新鮮・・・・。
「夜に見るとまた雰囲気変わりますね」
「この辺街灯少ないから暗いでしょ?」
「でも・・・月明かりで十分明るいです」
そう言って軽く笑って手の中の冷酒グラスを口に傾けた。
帰り際に2人で酒屋に寄って、店の中でも少し高めの酒を買った。
そしてすでに空になりつつある一升瓶。
たいして話し込むでもなく静かに情景に酔いしれて黙々と飲み続けた結果。
ゴクリゴクリと今も手の中身を空にして、ゆっくり唇から離して膝の上までその手を下したタイミング。
横からスッと酒瓶を向けられて苦笑い。
「酔わせてどうする気ですか?」
「フッ・・・驚いた。千麻ちゃんからそんな冗談が出るとは」
「冗談くらい言いますよ。別に機械で出来た女じゃないですから」
「仕事は機械並に正確だけどね」
「・・・・・・・今もそうでしょうか?」
「えっ?」
ああ、馬鹿な一言を言った。
すぐに気がついて自分で牽制。
何でもないというようにグラスの中身を煽って視線を月に上げていく。
それでもどうやら気にかかってしまったらしい雛華さんがその視線で言葉の真意を見通すように私を捉えて。
「・・・・・不安?」
「何がですか?」
「・・・・・・言っていいの?心理分析」
「・・・・・・・・じゃあ、・・・もう少し酔ってからにしましょう」
まだ冷静さ残る現状では話したくないと、近くにあったワインのボトルを持ち上げ微笑んでみる。
すぐにクスリと笑った雛華さんが私の手からボトルを抜き取ると、栓を抜いて用意してあったワイングラスにそれを注いだ。
「千麻ちゃんってお酒強いんだね」
「まぁ、程々に」
「程々?日本酒開けてワイン開けて程々?」
「雛華さんだって条件は同じでしょう?」
「まぁ、・・・・程々ですよ?」
オウム返し。
同じ言葉で切り返して笑う姿に力が抜ける。



