「ねぇ、千麻ちゃん」
「はい、」
「一応・・・聞いていい?」
「何でしょうか?」
「それ・・・」
「はい、」
「どう見ても俺のパーカーだよね?」
仕事を終え帰宅しそれぞれのペースで仕事から私生活に姿を変えてリビングに戻った際に、彼が苦笑いでそれを指摘した。
確かに正解。
勝手にクローゼットから拝借したそれは彼の物である。
「それが何か?」
「いや、俺に一言・・・」
「借りました」
「うん・・・、まぁ、別にそれは良いんだけど・・・。何で俺の?そして何でそんなセクシーに生足?」
「・・・昨夜寝巻にケチをつけられ着る物が無かったのと、・・・コレはもう習慣?」
そう結婚前から自宅では大きい元彼のシャツを一枚ワンピースの如く着用し過ごしていたわけで、今更それを変えるつもりもなくこうして実行しているだけの話。
それが何か?という眼差しで彼を見つめれば、何だかもどかしそうに苦笑いを浮かべ黙ってその姿をキッチンに向けてしまった。
何だろう?
何か問題あるだろうか?
そんな風に自分の体に視線を落とし見慣れた格好を確認していれば、
「あっ・・・」
響いた声に反応して振り返れば冷蔵庫を覗いていた彼が軽く息を吐きながら扉を閉めた。
そしてそのままテーブルの上に置いてあった財布を手にすると玄関に向かい始める。
「どこに?」
「ん、いや、ビール切らせてたなぁ。って」
「ああ、すみません。買ってきますよ」
そう言って彼より先にその身を出そうとすれば、すかさず伸びた腕に阻まれ制された。
何故?
そんな風に見上げれば、少し不愉快そうな彼に見降ろされた。
「そんな無防備な姿で夜道を歩くんですか?」
「・・・・・たかだか近所のコンビニまででしょう?」
「・・っ・・・そのたかだかの距離で変質者に襲われたらどうする気?」
「・・・・・叫びます」
冷静にそう切り返したのがどうやら逆鱗。
チッと舌打ちを耳にするとグイッと引かれた体が彼の後ろに押しやられ、その間に彼が玄関で靴を履いた。
それを呆気に取られながら見つめていれば振り返った彼が私を指さし念を押す。
「そのカッコ・・・俺のだから」
そしてパタリと扉を閉めると茫然とする私だけがその空間に残る。
『俺の』って・・・・私は私のですけど?



