彼の労わるような言葉に見事眉尻下げ堪えていた涙を流した彼女。
その頭をよしよしと撫で甘やかすように涙をその指先で拭う姿に一瞬唖然。
その瞬間に完全に悪役扱いの私と雛華さんは呆然とそれを見つめるしかなくて。
惨め。
憤ってムキになるほど私と雛華さんが惨めな立ち位置に追いやられるのだ。
そしてそれに追い打ちをかけるどこか甘い雰囲気の2人。
この空気をどう打破していいのかわからず、ただぼんやりと夫と元婚約者の親密な関係を見つめていれば。
「・・・・・分かった」
響いた声に私も彼も芹さんも意識を一点に集中。
つまりは雛華さんの姿に。
『嘘つき』だと告げられてから不動になっていた姿がその間に色々と葛藤していたらしく、その答えを今こうして口にした。
「俺が嘘つきで嫌なら茜ちゃんのところにいればいいよ」
「雛華さーーー」
「どうせ茜ちゃんの方が大人で、芹ちゃんを理解してくれてるんでしょ?こうやってすぐに泣きついて頼るくらい」
「なっ・・・」
「雛華・・・・自棄になるなよ。それに俺と芹ちゃんは別にーー」
「そうします!!」
「えっ!?」
「そうやって簡単に人の事疑うような人なんて嫌いです!雛華さんなんて大っ嫌い」
「ちょっと・・・芹ちゃんも落ち着いてよ。残るって・・俺も一応既婚者・・・」
そう言いながら見事巻き込まれた彼が唯一騒ぎを傍観していた私に『助けて』の視線。
一瞬、それに応じて口を開きかけたのにすぐに浮上した昼間の疑惑。
そしてスッと開きかけていた唇を閉ざすと彼を鋭く睨んだ。
自業自得。
少なからず彼も撒いた種なのだ。
「・・・・・・よかったですね。初恋の彼女がどうやら私の棘で傷ついた傷を癒してくれるみたいで」
「千麻ちゃん?!」
驚愕の表情。
だって、あなただって似たような物なのだ。
本当にやましいことが無いのなら、あの電話の時に下手な誤魔化しなく言ってほしかった。
私たちはいつだってそうやって意思の疎通をとってバランスを取ってきていたのだから。
事の解明をしようとすればするほどこじれていく現状。
収集がつくどころか悪化していく事態に真っ先に動いたのは雛華さんだった。
次いで私も。
いや、私の場合は・・・、
「行こう、千麻ちゃん」
そう言って私の手を引いたのは彼・・・・。
と、言っても夫ではなく過去に求めた人。
雛華さんだ。



