「・・・・・疲れてるので離していただけませんか?」
「じゃあ、簡単に一言怒ってる理由を告げたらどうですか?」
「ムカつくからです。はい、これでお答えしました」
「そんな千麻ちゃんに俺は今全力でムカついてるけど?」
堂々巡り。
理由を求める彼にそれを口にするのも腹正しいと、強引に抑え込んでいた体を押しのけ部屋に突き進む。
当然『おいっ、』と不機嫌な声が追ってきたけれど関係なしに寝室のクローゼットに向かった。
そしてジャケットを脱ぐと雑にハンガーにかけてシャツのボタンに手をかける。
当然追って存在共にしていた彼が不機嫌に腕を組んで私を横から威圧して、それでも無視してシャツも脱ぎ捨てた。
もう恥じらいもない素肌を躊躇いなく晒して、いつも着ている元々は彼の物であるパーカーに手を伸ばし止まる。
そしてすぐに方向転換で自分の服の引き出しを開けると、部屋着に使えそうなロングのパーカーワンピに身を包む。
完全拒絶。
身に着けるものでさえ彼の気配強い物は必要ないという。
勿論目の前でそれをされた彼も意味は理解して不機嫌な表情に更に深く不機嫌を刻む。
「本当にさぁ、何?全然意味が分からないんだけど?」
「もう一度、しっかりご自分の胸に聞いてみては?」
「・・・・・俺の胸はいつだって『千麻ちゃんが好き』しか答えてくれませんけど?」
「・・・・・・・・・血筋」
「あっ?」
どっかで聞いたセリフだと瞬時に思い、同時に私も芹さんと同じセリフを吐いていると思った。
そして何となく芹さんの気持ちを理解する。
言うは簡単。
でも彼女も私も言えば明確な答えを口にせず、相手に気がついてほしくて言葉を濁す。
そしてわからない相手に更に苛立ちを高めていく。
これは・・・・・・女の習性?
とにかく怒っている理由を自分で認めて謝ってほしいのか。
「ねぇ、何でそんなに怒ってるのさ?」
「・・・・・・・・」
不意に再度向けられた確認に意識を戻し、馬鹿らしいと答えを明確にしようと口を開きかけた。
そして答えを口にしたらそのまま全力でブチ切れて追い詰めてやろうかと。
グリーンアイをしっかり振り返って、もう口の中にまで言葉がこみ上げていたそんなタイミング。
私の声より早く響いたチャイムの音に2人して振り返る。
だけどもすぐに私に戻った彼の視線と続きを促すように言葉を発しようと動き始めた唇。
しかし彼の声もまた2度目のチャイムにその音を掻き消された。



