ああ、いっそ、
私が残業と銘打ってこの場所に留まりたい。
勤務時間の終了を迎えた瞬間に強く感じたこと。
結局お互いに一言も会話することなく仕事の終了。
無言でパソコンを落とし無言で各々帰り支度をする。
トントンと書類を整える音が馬鹿でかく感じるほどの静寂に未だ浮遊する険悪な空気。
それでも会社にいる間は上司。
そう頭に叩き込むとゆっくり彼に体を向けて仰々しく頭を下げた。
「お疲れ様でした」
「別に・・・・いつもよりは1時間は勤務外でしたから」
嫌味な態度に嫌味な言葉での応戦。
お互いにじっと睨むように視線を絡めて静かに外した。
そうしていつもの通り。
彼より先に歩き部屋の扉を開けて待つ。
不機嫌な苛立ち露な彼がちらりと私を確認しながら通りすぎ、それに気がついていても知らぬふりで歩き出した。
たいして長くないローカも無言を貫き、エレベーターのボタンを押すと都合よく上階に留まっていたそれはすんなり開いた。
それに乗り込み開ボタンを押すと彼の同乗を促し待つ。
当然無言で乗り込む姿が奥まで進んで壁に寄りかかり。
気配でそれを察知すると扉を閉めて1階を点灯させた。
ゆっくり下降する動きで独特の浮遊感に身を任す。
いつもならじゃれついてくる彼も不動のまま沈黙を守る。
当然だ。
それでなくても『触ったら殺す』オーラを私が終始出していて、今触れられたら本気で自分を煮沸消毒でもしてしまいそうだと思うほど。
そのくらいの嫌悪感。
でも彼もどうやら納得のいかない私の態度に相当不満で不機嫌なのだろう。
折れることなく言葉も発さず、そうして沈黙を守り自分たちのマンションまでそれは継続されたのだ。
そう・・・、
マンションまでは。
あくまでも会社の延長である車中までは彼も不満な感情の押し込み。
マンションのエレベーター内までは必死で感情を堪えていたのだろう。
そんな事はお構いなしに無言で歩き部屋のカギを開錠して中に入り込む。
そんな瞬間。
軽く予測済みではあった。
背後から肩を掴まれると半ば強引に近くの壁に縫い付けられて至近距離から鋭いグリーンが威圧する。
でも・・・・全く怖くないわ。
「さぁ・・・・・楽しい夫婦喧嘩をしようじゃない?いったい何をそんなに愛しい奥様はお怒りかな?」
嫌味な言葉と笑みの先行。



