声ばかりはいつも通りな彼の疑惑強い姿を捉えながら会話を続ける。
会話しながらも移動する彼らを追って、今も密着する彼に殺意まで芽生えそうなタイミング。
『あのさぁ・・・・少し遅れて戻ってもいい?』
「・・・っ・・・・・・理由が正当な物であるなら」
一瞬言葉に詰まったのは2人がようやくその動きを止めたから。
あとはその場所での彼の申し出に。
『正当かはわからないけど、ちょっと芹ちゃんと真面目なお話が盛り上がっちゃって』
「真面目・・・・ですか?」
『うん、超深刻?そして重要かな』
「それは・・・生活の糧である職務を後回しにしても?」
『現状・・・一番優先事項かな?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・諸々承知いたしました。どうぞ何時間でも後回しになさって残業に励んでください」
『ん?千麻ちゃんなんか怒ってる~?やだなぁ、妬かないでハニー』
「殺しますよ・・・・」
何へらへらした顔でいけしゃあしゃあとそのセリフを言うか!
ホテルの前で芹さんの肩抱いて!!
と、全力で叫んで殺してしまいたい。
そんな感情を携帯を握りしめることと声音に乗せて弾いたのに、彼からすれば状況知らぬ私は可愛くヤキモチからの怒りだと取ったらしい。
『もう、大丈夫だって、ちゃんと千麻ちゃんの隣に帰りますから』
「いえ、別に結構です」
『あはは、愛情感じる~』
「いえ、殺意の間違いかと」
『もう、勤勉で有能な奥様だなぁ』
「秘書です」
『で?有能な秘書さん、問題は解明した?』
「ええ、もう腹正しい程の問題は後は潰すだけかと」
『ははっ、それはそれは。じゃあ、程々にお昼食べてね?それ以上細くなったら抱き心地悪いじゃん』
「それは朗報。あなたの興味逸れるなら喜んで断食に耐えますから」
言ってもうたくさんだと通話の強制終了。
視界に捉えた彼には携帯を見つめて苦笑い。
まるで『仕方ないなぁ』とでも言いたげな笑みを浮かべ、次の瞬間には目の前のホテルに姿を消す2人。
しかもしっかり密着したまま。
まぁ、ホテルと言っても恋人たちが愛を育むようなそれでなく、宿泊施設としてやや高級である建物なのが救いなのか?
いや、もう現状その希望は0に近い物であると私も雛華さんも理解している。



